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「おはよー杠葉!」
「……」
(ほんっと何でこんなに被るんだろう?)
ゲームがスタートしてから、何故か毎朝登校中に会う。
通学路一緒だったっけ? 確か違った筈だ。
なに? 努力家なの? アホらし。
ーー嬉しいとか、別に思ってない。
「はぁぁ…」と溜め息を吐き、いつものようにイヤホンで耳を塞いだ。
なのにお構いなしに、一ノ瀬はいつものごとく大きめの声で話しかけてくる。
「しっかし今日も暑いなぁ。体育もあるし最悪……あー動きたくねぇー」
「……バスケ下手くそだもんね一ノ瀬。見てて笑える」
「えぇぇ本当かよ、俺結構頑張ってるくね?」
「はっ、どこが?
いっつもヘラヘラしててミスばっかじゃん。周りも全然見れてないし、それで頑張ってるとか何様? 逆に尊敬する。
もっとまともにできる奴いっぱいいるんだから、そいつらに任せてもうボール触らないほうがいいんじゃない?
座っとけよ、邪魔になるだけなんだし」
「あぁー………そう?」
(ーーぁ)
「だよなぁ…」と隣で苦笑され、視線が下がるのが見えた。
やってしまった。
(本当は、凄く上手なのに)
バスケ部でもないのにボール持ったらどんどん人を抜いてシュートしてる。
みんなで肩組んだりはしゃいだり凄く楽しそうで、僕もついそれを目で追ってしまってて……なのに。
(っ、この馬鹿)
「ぁ……ぁの、一ノs」
「おはよ一ノ瀬!!」
「よぉ!今日もあちーな!」
「っ、」
話しかけてきたのはあのメンツ。
ガシッと一ノ瀬の首に腕が回ってきた。
「うぉっ、と…いきなりしてくんなって」
「ははは悪りぃ悪りぃ……ん? どした?」
「なんか今日元気なくね?」
「ん? 何もないけど」
「嘘じゃん、なんだよ〜最近俺らと一緒にいねぇから寂しいのか? 可愛い奴だな〜〜」
「ちょ、やめろって!」
僕の事などお構いなしにどんどん進んでく会話。
……けど、正直今は僕よりこいつらと話した方が一ノ瀬も早く元通りになるだろうし、ラッキーだったかも。
話の邪魔にならないようにと、スマホの音量を上げ曲に集中した。
ーーと、
「なぁ杠葉!こいつ元気ねぇからちょっと助けてやってくれよ!」
「ぅわっ!」
一ノ瀬同様いきなり大きな腕が回ってきて、思わず体がビクつく。
その拍子にブツリとイヤホンが根元から外れてしまってーー
♪〜♪〜♪〜
「……ん、あれ?
これ一ノ瀬がよくカラオケで歌ってるやつじゃね?」
「本当だ、なんで杠葉がそれ聴いてんの?」
「ーーっ!」
慌てて音楽を止めるけど、流れてしまったものはもう取り消せない。
思わず一ノ瀬に目をやると、向こうもこちらを呆然と見ていて。
「それ…俺がこの前買ってやったCDの4番目の……
って、おい、杠葉!」
しまった。
(やば、やばい……っ!)
「捨てる」なんて会話したのに、ちゃんと曲入れてるのがバレた。
しかも、言われた通り4番聴いてるのも、通学中に聴いてるのも……全部全部。
「ーーっ」
腕を振り解き全力で走る僕を追おうとした一ノ瀬を、「ちょ!え、なになに詳しく!」と奴らが足止めするのが聞こえる。
それを背に、赤い顔を隠しひたすら教室まで走った。
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