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「クラスが一緒になってからあの時の意味が分かった。
お前本気で人付き合い下手だな、正直笑った」
「なっ」
「でも、その分目が離せなくて……
こうして連み始めてさ、俺毎日楽しかったんだ」
「ぇ、なん…で」
「杠葉が、可愛くて」
「ーーっ」
「みんな噂ばっかに気ぃ取られてて全然お前のこと知らないんだなって……いや、もう知らなくていいと思う。
俺だけがお前のそういうとこ知っとけばいい、知っときたい」
(待って)
ちょっと待って、お願い。
言われてる言葉がぐるぐる頭を回って、理解が追いついてない。
待って一ノ瀬、その先の言葉は…まだーー
「杠葉、俺さ。
あの時からずっと、お前が好きだった」
「……っ、は…はは」
〝嘘〟だ。
大丈夫だ、知ってる。
これはゲームでターゲットが僕で、一ノ瀬は仕方なく落とさないといけなくて。
ってかそもそも一ノ瀬はノーマルで僕とは違うし、そういうのも全部知ってて。
だから始まりから〝嘘〟だなんて、ちゃんと知ってるから。
ーーでも、
(これは、反則じゃん……っ)
ねぇ。
僕たち、好きになるタイミング一緒だったの?
あんな短い会話、ずっと今まで覚えてたの?
あの時名乗りもしなかったのに、僕のこと調べたの?
2年で一緒のクラスになれて嬉しかったって、目が離せなかったって、本当?
そんなの…そんな奇跡みたいな、ことーー
「お、おい杠葉っ、なんで泣いて」
「ぼく、も」
「え?」
「僕も…ずっと、一ノ瀬が好きだった……っ」
ーー嗚呼。こんなはずじゃ…なかったのに。
(嘘でも嬉しいとか、馬鹿かよっ)
本当は、この3ヶ月間ずっと楽しかった。
同じクラスになれたのに全然話せないから、こんなに一緒にいられるのが嬉しくて嬉しくて……
だから、貰ったCDも捨てれなかった。
この曲が好きなんだなって、聴いて自分も好きになろうとした。
今日だって眠れないくらい楽しみにしてて遅刻してしまって、そんなことするくらいに浮かれてて。
朝の登校も休み時間も放課後も、何気ない会話だって全部全部大切で…幸せで……
「な、のに、嫌なこといっぱい言って…ごめ、なさっ」
「いいって!ちゃんと分かってたし。
杠葉言った後〝やってしまった〟っていつも顔に書いてんだよ。だから大丈夫」
「〜〜っ、ふ」
そんなの知らない。なんで一ノ瀬が知ってるの?
(あぁもう、馬鹿みたいだ)
本当の事を知っていても、この3ヶ月は僕にとって最高の宝物で。
入学式のあの瞬間を覚えてくれていたことも、こうして告白してくれたことも。
みんなみんな、忘れたくない思い出だ。
……だから、
「なぁ杠葉」
「グスッ、なに」
「明日さ、話したいことあるから放課後時間くれない?
絶対……絶対に、聞いて欲しいことなんだ」
「ーーっ、ぅ、ん」
それが今日で終わることを、ちゃんと知ってるから。
だから どうか。
(ごめん、一ノ瀬)
綺麗な思い出のまま、終えさせてくださいーー
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