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結ばれた春編1

365日間、倫太郎と悠太はキスをした。 365日後、ちょうど倫太郎の受験シーズンだから、抱き合うのはおあずけにして、またおまじないをした。 一日一回キスをする日々を続けて、倫太郎が大学一年生、悠太が高校三年生の春……。 アパートまでの帰り道、倫太郎は笑顔がかわいい恋人のことを考えていた。 (悠太……今夜も待っててくれるかな) ひとり暮らしをはじめた倫太郎は、悠太に合鍵を渡した。いつ来てもいいと伝えてある。 倫太郎はドアを開ける。 悠太は、ベッドに腰かけて雑誌を読んでいた。 「悠太」 倫太郎が名前を呼ぶと、悠太はパッと振り向いた。 「あっ! おかえりなさい、倫太郎さん」 倫太郎は高校を卒業してから、悠太に「先輩と呼ばないでほしい」とお願いした。呼び捨てでもよかったのに、悠太はちゃんとさん付けで呼んでくれる。 悠太はうれしそうに倫太郎に駆け寄る。 (かわいい……) 倫太郎は悠太を抱きしめた。 「えへへ。倫太郎さんの匂いだ」 悠太は倫太郎の首筋に鼻先を押しつける。 「俺の匂い? 汗臭いだろ」 「そんなことないです。いい香り」 (いい香りって……) 「シャワー浴びてくる」 「だめです」 悠太は倫太郎をぎゅっと抱きしめる。 「もう少しこのままで……」 「……わかった」 倫太郎は、悠太の背中をぽんぽんと叩いた。 「今日はずっといっしょにいられますか?」 「ああ」 「うれしいな……」 悠太は倫太郎の肩に頬を乗せる。 (なんか、ペットみたいな感じだ) 犬を飼ったらこんなふうに甘えるのだろうか。 (いや、猫のほうが近いか?) 悠太は猫のような気がする。人懐こいところも、自由気ままなところも。 (俺も、悠太と一緒にいられてうれしいよ) 「倫太郎さん。……俺、勇気が出ました」 悠太は倫太郎の目をじっと見つめる。 「そうか……」 倫太郎は悠太の髪を撫でた。 「俺のことを大切にしてくれてありがとう」 倫太郎は悠太の手を取った。 「悠太。俺の初めてをもらってください」 「はい!」 悠太は元気よく返事をしたあと、急に心配そうな表情になった。 「あの、倫太郎さん……」 「なに?」 「俺、うまくできるかな……」 「大丈夫だよ。俺も初めてだし」 「そうだけど……。経験豊富なほうがいいんじゃ……」 「初めて同士で戸惑ったり、喜んだりするのも楽しいんじゃないか?」 「確かに……」 悠太は納得しているようだ。 「でも、本当にいいんですか?」 「なにが?」 「俺、初めてだから……」 悠太の声が震えている。 (緊張してるのか……) 倫太郎には、悠太の気持ちがよくわかる。 (俺もそうだから……) 倫太郎だって、初めてだ。不安がないわけではない。でも、悠太のことが好きだから、怖くない。 「悠太、こっち向いて」 倫太郎は悠太の頬に手を添えて、自分のほうを向かせた。 「俺だって、初めてなんだ」 「倫太郎さん……」 「だから、お互いさま。俺は悠太にどんなことをされても、嫌いにならない」 倫太郎は悠太を安心させるように微笑む。 「倫太郎さん……」 悠太は泣きそうな顔をしていた。 (かわいい……) 悠太はかわいい。かわいいから、もっと甘やかしたくなる。 倫太郎は悠太の頭を撫でた。 「悠太、泣くなよ」 「泣いてませんよ……」 悠太は涙をぬぐう。 「泣いてるだろ。どうして泣いてるんだ?」

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