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「なっ、ど、どうって……いきなり何?」
「ウケる。なに動揺してるんだ」
「してないって。どうもこうも無いよ。アイツはただの教え子の一人で、それ以上でもそれ以下でもない。変な事言うな」
言いながら、ジョッキに残っていたビールを一気に飲み干し、店員さんにお代わりを頼む。ちょっと度数が高めの酒が飲みたい気分だったので、思い切ってソルティドッグを注文することにした。
「でも……。断ったのに、めげないんだよなぁアイツ……。あれから何度か告白されたんだけど……。俺みたいなオッサンの何処がいいんだか……」
自分はアキラみたいな超絶イケメンでは無いし、性格も至って普通。趣味といえば昔から体を動かすことが好きで、暇さえあれば近所のバスケチームのみんなとバスケを楽しんでいるくらいの何の取り柄もない男だと自分では思っている。
なのに何故あの子は自分を好きだと言うのか、今でもわからない。
大方、性に興味のある年頃でもあるし、友人達も皆そう言う話をしているから、手っ取り早く童貞を卒業したいだけなのだろう。
いやいや、だからと言って男に走るのはどうなんだ?
「俺、そんな軽そうに見えんのかな? そもそも、なんで俺……?」
考えれば、考えるほど謎である。ゲイの友人は何人か知っているが、自分はゲイでは無い。歴代の恋人はみんな女性ばかりだったし、男性と付き合ったことなんて一度もなかった。
それどころか、今まで男と恋愛したいと思ったこともなければ、抱きたいとも抱かれたいとも思ったこともない。
そんな自分が男に告白されるなんて……。正直、困惑するばかりだ。
「つーか、無理なら無理ってハッキリ言ってやればよかったじゃないか」
「言ってるよ。何度も……。でも、最近じゃ、やっぱダメかぁ~みたいな軽いノリになって来てて……何がしたいんだかアイツは」
「あいさつ代わりみたいなもんだと思えばいいんじゃねぇの? 心底無理って訳じゃないんだろ?」
「……」
あくまでも他人事のよう口調にいささかムッとして思わず眉間に深い皺が寄った。でも、確かに彼の言っている事は正論だ。
「わかんねぇよ……。俺は教師だし……。考えちゃいけない気がして」
「ひっでぇなぁ、ちゃんと考えてやれよ。お前のそのあいまいな態度がダメなんじゃないか? ……そんなんだから、彼女に二股掛けられて捨てられるんだろ」
「っ……。うるさいなぁ……」
痛い所を突かれて言葉が出てこず、透は運ばれてきたばかりのソルティドッグを一気に飲み干した。
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