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和樹Side 2

ペンを置いて、バスケットボールを手にこっそりと部屋を抜け出す。 「カズ、あんた何やってんの、こんな時間に……」 玄関で靴を履こうとした段階で声を掛けられ、びくりと身体が強張った。 錆びついたロボットのようにギギッと顔だけ向けると、顔にパックをしながら歯ブラシを口に咥えている姉の美咲が呆れたような目で自分を見ていた。 「姉ちゃん……。えっと……。ちょっと、息抜きに……」 「こんな時間から?」 「うっ……」 そう言われると、ちょっと困る。確かにもうすぐ21時になる頃だし、明日も学校があるから外に出てウロウロしていい時間帯では無い。 やっぱりダメかなぁと肩を落とし靴を脱ごうとしたその瞬間。 「あー、そう言えばハーゲンダッツの新作出てたんだった。 食べたいなぁ。ストロベリーホワイトショコラ。何処かの可愛い弟が買ってきてくないかなぁ?」 「へ?」 「受験でストレス溜まってるんでしょ? まぁ、あたしも受験の時息抜きしたい~って思った事何回もあるし。 時間帯的にちょっとアウトな気もするけどまぁ……。偶にはいいんじゃない? ハーゲンダッツ一個で今回は見逃してあげる」 パチンとウインクされて、思わず頬が緩む。 「姉ちゃんありがとう!」 「ストロベリーホワイトショコラだからね! 忘れずに買って来なよ? 間違ってたら絞めるから。 あと、日付が変わる前には戻っておいで」 「っ、わかった。サンキュ、姉ちゃん!」 持つべきものはやっぱり姉だと慌てて財布を取りに戻り、ポケットに突っ込むと、自転車に乗って夜の街へと飛び出す。目指すは近所のミニバスコート。この時間帯ならきっと空いているはずだ。

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