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頭痛の種 4
「私ね、今度結婚することになったの」
突然、恋人の|須藤 奏多《すどう かなた》に言われたのは、仕事が終わって一緒に駅まで歩いている時だった。
透の足がぴたりと止まる。
夜になると肌寒さを感じるようになってきた、9月の終わりの事だった。
付き合い始めて5年目。そろそろ結婚も視野に入れたいと思っていた。自分はプロポーズをした覚えが無いから、もしかしてこれは、早くプロポーズしてくれという彼女なりのアピールなのだろうか?
「えっと……それって、つまり?」
すぐには理解が追い付かず、彼女の本心を訊ねるべく恐る恐るそう問いかけると、彼女は足を止めこちらをくるりと振り返り、いつもと変わらない表情を透に向けた。
「まだわからない? 別れて欲しいの」
ハッキリとそう告げられ、透の表情は凍り付いた。
目の前が真っ暗に染まる。
6年前、年齢が近いからという理由だけで、新卒の職員として今の高校に赴任して来た彼女の指導係に透は抜擢された。担当する教科こそ違うものの、何事にも一生懸命取り組み華のような笑顔で生徒に優しく接している姿をよく見かけていて、一緒に仕事をしていくうちに透は彼女に恋をした。
彼女はとびっきりの美人とまではいかないが、そこそこ可愛く他の教師や生徒達からの人気も高い。
年齢も近く、話しやすい雰囲気を持っていた為、しょっちゅう告白を受けていたようだ。
5年前ようやく自分の思いが通じて晴れて恋仲になった時は天にも昇るような気持だった。それなのに――。
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