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頭痛の種 6

ふぅ、と紫煙をゆっくり吐き出して、透は目を細めた。いつもなら校内で吸う事は一切しないようにしているのだが流石に今日は吸わずにはいられなかった。 校舎裏手に設置されている喫煙スペースは、普段生徒が使用できないように鍵がかかるような仕様になっている。 今は誰にも会いたくなくてつい、此処に来てしまったが、あまり良い判断ではなかったかもしれない。 ポケットの中に入れっぱなしになっていた携帯灰皿を取り出して、吸いかけの煙草を押し付けていると、人の気配を感じて顔を上げた。 「やっぱりここに居た。 透ってば何処にも居ないから探しちゃったわよ」 そこには、抱っこひもで幼い子供を抱きかかえながらベビーカーを押した元恋人の姿があった。 一瞬幻覚でも見ているのだろうか? と、透は我が眼を疑ったが、どう見てもそこに居るのは奏多だ。 驚きの余り呆然と立ち尽くしたまま動けないでいると、奏多はベビーカーを脇の方に置き、つかつかと歩み寄って来て目の前に立った。 「……子供に煙草の煙は良くないだろ」 一体なにをしに来たんだと眉を顰めれば、奏多は自慢の緩いふわっとしたウェーブの髪を揺らしながらくすくすと笑う。 「ウチでは旦那も私も吸ってるから関係ないわ」 そういう問題じゃないだろう。と言いかけて、透は口を閉ざした。いくら元恋人とは言え、他人の家庭の事にとやかく口を挟むのは良くない。

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