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頭痛の種9
「……何やってんだ、お前……」
変な所を見られてしまい、慌てて誤魔化そうとしたが、上手い言い訳も思いつかず和樹がこちらに向かって歩いて来たのを見て諦めて声をかけた。
「えっと。数学のテスト範囲でわかんないとこがいくつかあって……」
教科書やノートを片手におずおずと話しかけて来る。本当はもう家に帰って寝てしまいたい所だったが、生徒にそう言われたら仕方がない。
「……どこがわからないんだ?」
「えっと、ここなんだけど。あと、この問題も……」
「ああ、これは――」
透は面倒くさがりながらも、根気よく質問に答えていった。こういう風に頼られるのは嫌いではない。むしろ好きな方だから、教師は天職だとすら思っている。
それにしても、去年までは勉強したくない! なんてボヤいていたのに、最近はきちんと勉強と向き合っているようだ。努力の痕が垣間見えて少し嬉しくなった。
「はー、ありがと。マッスー! やっぱ教えるの上手いね」
「たく、おだてても無駄だぞ。で? もう他には無いか?」
「……えっと、じゃぁ……マッスーの休日の予定が知りたいんっすけど」
「ハイハイ。休日の予定ね……って、ナニ?」
「あ、あのさ、良かったら今度の休み、俺と出かけてくれないかなって」
モジモジと照れ臭そうにしながらもはっきりとそう告げられ、透は目を丸くした。
「は? なんで」
「なんでって……。たまたま遊園地の無料チケットが手に入ったんだ。でも、他に一緒に行きたい人もいないし……。マッスーと一緒に行きたいなぁって」
緊張しているのか、そっと目の前に差し出されたチケットを持つ手は僅かに震えて、透の返事に胸をドキドキさせているのがわかる。
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