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遊園地に行こう 4
約束の日、その日は晴天。絶好のお出かけ日和になった。
本当は家まで迎えに行ってやろうと思っていたのだが、どうしても電車で行きたいと和樹が譲らないので、仕方なく駅での待ち合わせとなったのだが……。
待ち合わせに指定した時計台の下には同じように知人や恋人を待つ人が大勢いてなんだか落ち着かない。
そう言えば、以前この場所で和樹と共謀して親友の恋路を手伝ってやったっけ。あの時はまさか自分が和樹と遊園地に一緒に行く日が来るなんて想像すらしていなかったけれど。
「マッスー!」
もうあれから2年も経つのかと物思いに耽っていると、遠くから透の姿を見つけた和樹がブンブンと手を振って駆け寄って来るのが見えた。
白いシャツにデニムを合わせ、上には黒いベロア風パーカーを羽織っている。 黒いキャップがアクセントになっていてとても良く似合っていた。
「よぅ。今日は随分とオシャレしてるじゃないか」
「へっへー。俺の勝負服なの」
得意気に笑う和樹に、透は「はいはい」と相槌を打ってから歩き出した。
改札を抜け、人込みを掻き分けながらホームを目指す。休日と言うこともあってホームは人で溢れかえっていた。
「うわ、意外と混んでんな」
「なー。時間ずらした筈なのに」
「ま、仕方ないな。少し我慢しよう」
平日と違って通勤ラッシュほどではないものの、それなりに人は多い。ギュウギュウ詰めではないが程々に乗り降りがあるようだ。
丁度到着した車両に乗り込みドア付近に陣取ると、視界の端に見慣れた人物を捉えたような気がした。
よぉく目を凝らして見てみると、無駄に顔のいい長身の男がコソコソと隠れるように腰を屈めて隣の車両からこちらの様子を伺っている。その真横にはふわふわと柔らかそうな茶色の髪が見え隠れしており、更にその近くには、苦笑しながらその様子を眺める雪哉の姿があった。
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