28 / 226
遊園地に行こう 6
「――走るぞ」
「へっ、えっ!?」
遊園地に着くなり和樹の腕を引いた。電車の中ではわからなかったが、どうやら雪哉の恋人の橘も一緒に居たらしい。
190㎝近くの顔のいい男が3人も居れば嫌でも目立つ。
「あっ、逃げたぞ!」
「えっ、うそ! 気付かれてた!?」
後方から聞こえる声を無視して走り続ける。
後ろからバタバタという足音が聞こえたが無視を決め込んだ。
暫く走って、漸く足を止めた頃にはすっかり息が上がってしまっていた。
こんなに走ったのは久しぶりだ。
透は膝に手を当て、大きく息を吸い込んでから呼吸を整えた。
「マッスーいきなりどうしたんだよ。いま、拓海の声が聞こえた気がしたんだけど……」
一方の和樹は息一つ乱さず、不思議そうに首を傾げた。
「気のせいだろ」
「そうかなぁ?」
「それとも何か? 俺と過ごすよりいつメンで過ごす方がいいって?」
意地の悪い聞き方をしてやれば、和樹がブルブルと首を振った。
「せっかく来たんだ。今日は二人で楽しもうぜ」
「わ……っ」
頭のキャップをわざとずらして被せてやり、ニッと口角を上げて見せると、和樹の顔が一気に赤く染まった。
和樹の反応がいちいち可愛い。そんな反応を見せられるとついからかいたくなってしまう。
透は思わず口元を緩め、帽子ごと和樹の頭をガシガシと撫で回してやった。
「じゃ、そろそろ行こうぜ? まずは何処にする?」
「んー? じゃぁ……お化け屋敷」
「え……いきなりかよ」
てっきり近場にあるジェットコースターにするものだと思っていたのに、まさかのホラー系。
透は思わず苦笑いを浮かべ、頬を引き攣らせた。
ともだちにシェアしよう!