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遊園地に行こう 10
動揺を隠すように視線をメニュー表へと移し、わざとらしく咳払いをした。
「で? 結局何にする?」
「……ん」
言葉に出すのは少し憚られ指でフルーツパフェを指し示すと和樹がくすっと笑って席を立ち注文窓口へと歩いて行った。
「……はぁ」
何をやっているんだ自分はと思わず溜息が洩れた。楽しくてつい忘れてしまいそうになるが、和樹は自分の事を好きだとか言っている男だ。和樹が傍に居ると落ち着くけれど、それはきっと恋心ではない。ただ、和樹が隣に居る事が当たり前になっているだけだ。
いや、それもどうかと思うけれど。などと色々考えているとふっとテーブルに影が差した。
「あの……おひとりですか?」
女性特有の高めの柔らかい声が響いて来てふっと顔を上げる。目の前に二人組の若い女性が立っていた。
あぁ、もしかしてこれは俗に言う逆ナンと言うやつだろうか?
「えっ……と? あー、いやツレを待ってて……」
「へぇ、そうなんですかぁ。……もしかして、彼女?」
「い、いや……彼女とかじゃないんだ」
まさか自分が逆ナンされる日が来るとは想像もしていなかった。
「お兄さん凄く体格がいいですよね、何かスポーツとかされてるんですか?」
「えっ、えぇっと……たまにバスケットを……」
しどろもどろになりながら何とか言葉を紡いでいく。正直、こういった類の経験が皆無なのでどうしていいかわからない。
どうしたらいいかわからずに戸惑っていると、突然グイッと腕を引かれた。驚いてそちらを見ると、明らかに不機嫌そうな顔をした和樹が透の腕を掴んでいた。
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