38 / 226

てっぺんまでもうすぐ 2

好奇心に駆られて恐る恐る頬に触れてみると、見た目以上に柔らかい感触に思わずドキッとした。 「んぅ……ん」 むず痒そうな声を出し、眉間にシワを寄せた透にビクッとして慌てて手を引っ込める。だが次の瞬間、無意識なのか手にすり寄ってきたのでまたドキドキしてしまう。 ……可愛い。 口に出したら怒られるだろうが、透の事をそんな風に思ってしまった自分にびっくりだ。もっと触れたい……。 そんな衝動に突き動かされるように再び手を伸ばしかけたその時、ゴンドラがガタンと揺れた。 「おわっ」 慌てて目の前にあるガラスに手を突いて自分の体を支える。危なかった、もう少しで透に突っ込んでいく所だった。 ホッとして視線を上げると、形のいい唇に目が行った。よくよく見てみれば口元に小さいほくろが一つある事に気付く。だらしなく半開きになった口から覗いている舌が妙に艶めかしくてなんだかドキドキしてしまう。 跳ねまわる自分の心臓の音が身体の中にうるさく響いて、透に気付かれてしまうのではないかと心配になった。これ以上見てはいけないと思いながらも目が離せない。 ――キスがしたい。そんな欲求が沸々と湧き上がってくる。 気が付けば吸い寄せられるように顔を近づけていて、あと数センチで触れるという所でハッと我に返って慌てて仰け反った。 やばいやばいやばいっ! 何考えてんだ俺は!? いくらなんでも寝てる相手にこれはマズいだろう。 こんな、寝込みを襲うような事……。 そんな葛藤を続けている間も観覧車は上昇を続けやがて頂上へと到達しようとしている。 今なら、誰にも見られないんじゃないだろうか? ドクンドクンと高鳴る鼓動を押さえつけながら、そっと身を乗り出して、ゆっくりと顔を近付けていく。吐息が掛かりそうな距離にまで迫ると、ほのかにシャンプーの香りが漂ってきて、それだけで頭がクラクラしてくる。 どうか、起きませんように――。そう強く願いながら、自分のそれをそっと唇に押し当てた。

ともだちにシェアしよう!