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てっぺんまでもうすぐ 4
良く冷えた外の空気が心地よく、火照っていた体を冷やしてくれる。
すっかり日も暮れてしまい辺りは暗くなっていたが、イルミネーションが煌めいており園内は幻想的な風景が広がっていた。
「……今日は付き合ってくれてありがと」
帰りの電車の中、突然和樹がポツリと言った。
「改まってなんだ?」
「いや、マッスー最近元気なかったみたいだからさ。気分転換になれば良いなって思ってたんだけど……もしかしたら無理させたんじゃないかって思って」
不安そうな表情で思いを吐露する和樹に、透はフゥと息を吐き出した。
まさか和樹がそんな事を考えていただなんて思ってもみなかった。
「お前はほんっと馬鹿だな」
「なっ! なんだよ……」
「俺が一緒に行きたいって思ってOKしたんだから、子供が気を遣うんじゃない」
軽く頭を小突いてやると、また子ども扱いして。と不満げな声を上げる。
「俺にとっちゃまだまだガキだよ。いくつ違うと思ってんだお前」
「直ぐに大人になるってば」
「ハハッ、そりゃ楽しみだ」
不満げな声を漏らすその姿がなんだか可愛く思えて、つい笑い声を上げてしまう。
すると、プイッと拗ねた様に顔を背けられたので、肩を引き寄せ頭をぐりぐりと撫でてやった。
こう言うやり取りは正直言って嫌いじゃない。
最寄り駅に着き、改札を出て別れ道に差し掛かった時、透は不意に立ち止まった。
それに気付いた和樹も足を止め振り返る。
「……今日は楽しかった」
ぽつりと零れた言葉に、和樹の顔がみるみるうちに綻んでいく。
「俺も! すっげー楽しかった!」
じゃあまた明日、学校で。ちぎれんばかりに手を振って帰って行く和樹の背中を見送りながら、恥ずかしいヤツ。とばかりに苦笑する。
だがその表情は晴れやかでとても穏やかなものだった。
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