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微睡の中で 4
透をベッドに寝かせると、和樹はようやく一息ついた。此処までたどり着くのに随分苦労した。途中で何度も誘惑に負けかけたが、何とか堪えきった自分を褒めてやりたい。
「ほんっと、危なっかしいな……」
この人、酔うと毎回こんな感じなのだろうか? だとしたら、あまり酒は飲んで欲しくない。いや、でも酔った透は可愛いけど。
そっと頭を撫でると、気持ち良さそうに目を細める姿が猫みたいで愛らしい。
柔らかな肌に触れると、吸い付くように手に馴染んで心地良い。もっと触っていたくて、指先でなぞるように頬を撫でたら僅かに身じろいで透が小さく声を漏らした。
薄く開いた唇に視線が釘付けになる。キスしたい。キスしてもいいんじゃないか。
どうせ明日になったら忘れてるはずだし――。
指先でそっと唇をなぞってみる。ふにっと柔らかい感触がして、ごく、と堪らず息を呑んだ。
あー、やばい。我慢出来ない。
衝動のままに顔を近づけると、透がうっすらと目を開た。起こしてしまっただろうか?
突然の出来事に驚いて固まっていると、指先に舌が絡んみつく。ちゅう、と音を立てて吸われ和樹は硬直した。
え、ちょっと何コレ。どういう状況? もしかしなくても俺、誘われてたりする? 混乱していると、今度は舌先が絡みつくようにして指先を舐められゾクッと背筋が震えた。
なんだかとてもイケナイ事をしている気分になってくる。いや、実際そういう行為をしたいと思ったのは認める。が、酔っているとはいえまさか透の方から仕掛けて来るとは思わなかった。
動揺しながらも、恐る恐る人差し指と中指を口内へと侵入させる。歯列をなぞり上顎を擦るとくぐもった吐息が漏れて、それが更に興奮を煽る。
「マッスー、誘ってんの?」
耳元に唇を寄せ、低く囁いてやるといきなり首に腕が絡みついて来た。そのまま引き寄せられて、透の顔が間近に迫る。
そして、ちゅ、と軽く触れるだけのキス。たったそれだけでも和樹の思考を停止させるには充分すぎた。
今にも蕩けそうな視線が絡み、熱い吐息が頬を掠めたかと思うと一度離れた唇がまた重なった。しっとりと唇を吸われ、首の後ろがざわっと粟立つ。
僅かに開いた口内にするりと舌が滑り込んで来る。びっくりしすぎてどうしたらいいのかわからず固まったまま動けずにいると、透は戸惑う和樹の舌を絡め取って強く吸い上げた。
「ん……、ふ……っ」
柔らかくて温かな舌が口腔内で動く度に甘い痺れが走る。
知らなかった。キスってこんなに気持ちの良いものだったなんて。夢中で貪るような濃厚な口づけに頭がくらくらする。舌と舌がぶつかり合った時、ちゅくっと濡れた音がした。それだけでも充分刺激的すぎて、和樹は思わず腰を引いた。
天然の痴態に煽られ、今や下半身はズクズク疼いて痛いほど張り詰めてしまっている。
だが、透は何も答えなかった。それどころか、ひとしきりキスをして満足したのかスースーと穏やかな寝息まで聞こえてくる始末だ。
「……マジかよ……っ」
散々期待させておいて、おあずけとか酷い。据え膳食わぬは何とやらというが、流石にこの状況で何もしないというのは男として無理がある。
無防備にすやすやと眠る透の姿にゴクリと喉が鳴る。
ああ、もう、いっそのことこのまま襲っちゃおうか。そもそも誘って来たのは透の方だ。
このまま欲望に忠実に行動してしまえと頭の中で悪魔が囁く。そうだよ、据え膳喰わねば男の恥。こんな美味しいチャンス逃す手はない。
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