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微睡みの中で 6

透は寝ぼけた様子でむにゃむにゃと何か呟いている。 「……奏多って、誰?」 訊ねてみても、答えが返って来るはずもない。 「彼女居ないって言ってたくせに……。って、あぁ、そっか……彼女じゃなくて、彼氏か……?」 自分で言った言葉に、自分でショックを受ける。 「嘘つき……」 ぼそりと呟いた言葉は静かな室内で思ったよりも大きく響いた。 透がこんな無防備な姿を晒す相手が他にも居て、さっきみたいな濃厚なキスを誰かとして、その先も……。 そう考えるだけで嫉妬で腸が煮え繰り返りそうになる。 散々人を煽って期待させておいて、結局は別の奴の名前を呼ぶなんて酷すぎる。 だから少しくらい自分だっていい思いをしたって罰は当たらない筈だ。 こんな目の前に食べてくださいと言わんばかりの無防備な状態で寝ている方が悪い。 「――お手付き済みなら……誰とヤったって変わんないよな……」 そう。これは浮気なんかじゃない。ただの遊びだ。劣情に煽られ仄暗い感情に突き動かされるように、和樹は透の首筋に顔を埋めた。 「……っ」 ビクッと一瞬体が強張ったのが伝わって来たが気にせず唇を押し当て、舌先でなぞるように舐め上げる。 そのまま強く吸い付くと白い肌に赤い痕が残った。 「ハハッ、くっきり……」 独占欲の証ともいえる所有印に自然と笑みを浮かべ、そこを指でツツ……と撫でてやる。 「このまま、俺のものになっちゃえばいいのに……」 そうすれば、こんなモヤモヤとした気持ちを抱えなくても済むのに。 和樹は切なげに表情を歪めると、透の上に覆い被さった。

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