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あぁ勘違い 2
二日酔いも相まって、朝から最悪な気分だ。おまけに全身が気だるいし頭も重い。
「うう……、頭痛ぇ……体だっる……」
「よぉ、昨夜はちゃんと帰れたか?」
職員室の自分のデスクでぐったりとしていると、アキラにポンと肩を叩かれびくりと肩を震わせた。
「なぁ、昨夜俺の家に来た?」
「え? 何言ってるんだよ。自分で帰れるって言ってただろ?」
「だよなぁ……」
キョトンとしたアキラの言葉に、透は思わず頭を抱える。
「なんだよ、美女でもお持ち帰りしちゃったわけ?」
「……美女だった方がまだましだ……。嫌、それもダメだけど」
「はぁ? じゃぁ何持って帰ったんだ?」
「……」
透は答えなかった。否、答えられなかったと言う方が正しい。
「……? お、ハルだ。相変わらず、3人一緒かよ……」
アキラの言葉にふと視線を上げると、ちょうど拓海、雪哉、和樹の三人が昇降口へ向かって歩いてくるところだった。
向こうもこっちに気付いたのか、拓海が嬉しそうな顔を向け、同時に二人もこちらを見る。
ところが、いつもなら嬉しそうに手を振って来る和樹が、今日に限ってそれをしない。それどころか目が合があった瞬間、思いっきり逸らされてしまった。
「……ッ」
やっぱり……。どうしよう。もう絶対避けられてるじゃん! 和樹がああいう態度を取るという事は、やっぱり襲ってしまったんだろう。当然と言えば当然だが、やはりショックだ。
「透? お前、和樹と喧嘩でもしたのか?」
「あー、……喧嘩というか……何というか……」
なんとも歯切れの悪い透の様子に、アキラは首を傾げる。
「お前も次から次へと悩みが尽きないなぁ……。学食1週間分で相談に乗ってやるけど?」
「……三日分じゃダメか?」
「ハハッ、問題はそこ? OK、いいよ。一限目の授業ねぇし……お前も空いてるだろ? 準備室行こうぜ」
「おう」
透はよろりと立ち上がると、鞄を持って職員室を後にした。
「プッ、あはははは! おまっ、マジかよウケる」
静かな社会科準備室内に、アキラの笑い声が響き渡る。
「笑うなっつーの」
「だってさぁ、覚えて無いとか最悪じゃん」
「……だよなぁ」
透は溜息をつくと、ズルズルと床にしゃがみ込んだ。
「でもなぁ……普通、無理やりヤられたんならお前にそんなもの付けるか?」
「……確かに」
「案外、掘られたのお前の方だったりしてな」
冗談交じりに言われた言葉が、一瞬理解出来なかった。
「……は?」
「考えてもみろよ。記憶無くすぐらい泥酔してんのに勃つか?」
「……え……えっ?」
サァっと血の気が引いた。そう言われてみればなんだか腰がだる重い感じもする。
思わず自分の尻を手で押さえた。
「うはっ、ウケる……そっかぁ、透もついに……ププッこりゃナオミ姐さんに頼んで赤飯かぁ?」
「いやいやいやっ、何言ってんだ! そ、そんなわけ……」
慌てふためく透の脳に、『……起きないと、このまま襲っちゃうよ?』と耳元で囁かれた声がフラッシュバックして蘇った。
「……っ、嘘……だろ?」
「まぁ、どっちみち真実を知ってるのは和樹だけなんだからさ、本人に直接聞
けばいいんじゃね?」
「聞けるかっ、んな事っ!」
他人事だと思って。透は恨めしげにアキラを見上げた。
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