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あぁ勘違い 3

(和樹SIDE) 「で? いざって言う時に、スマホが鳴って何もせず帰っちゃったわけ?」 昼休み。今日は天気も良かったので和樹は拓海と雪哉と共に屋上へと足を運んでいた。 いつもなら昼食を食べながらくだらない雑談をするのだが、周囲にあまり聞かれたくない話題という事もあり、人気のないこの場所を選んだのだ。 「だ、だってさ……、流石にヤバいかなとか色々考えちゃって……」 「ヘタレかよ」 「う……っ」 辛辣な拓海の言葉に、雪哉もコクコクと頷く。 「……しかも、慌ててパンツ履かずに逃げるとかさ、増田先生今頃パニックなんじゃない? まぁ、暗いとどれがどれだかわからなくなる気持ちはわからないでもないけど……」 「なんだよユキ~、お前そんな経験あるんだ?」 ニヤリと笑いながら拓海に問われ、雪哉は飲みかけの牛乳をブホッと噴き出しそうになり慌てて口元を手で拭った。 「へぇ、あるんだ」 「っ、ぼ、僕の事はいいから! それより、和樹。どうするんだ?」 真っ赤になってしまった頬を誤魔化すように咳払いすると、雪哉は慌てて話題を元に戻す。 「ど、どうって言われても……なんか気まずいし……」 「……」 モゴモゴと口籠る和樹に、二人は呆れたような目を向ける。 「ほんっとヘタレかよ」 「うぅ……っ」 「和樹って、普段ウザいくらい増田先生に絡んでいくのにこういう時は全然ポンコツなんだな。もっとグイグイ行くのかと思てたよ」 「ヘタレだのポンコツだのって、さっきから二人とも酷くね!?」 「だって事実だろ?」 「……っ」 二人の言う通りなので反論の余地もない。 しかし、この状態でどうしろと言うのだろう? 正直顔を合わせるのすら気まずいのに。 「まぁでも、無理やりヤんなくて良かったんじゃない?」 「え? なんで?」 雪哉の言葉に、パンに噛り付いた手を止める。 「なんでって、考えてもみなよ。相手は彼氏持ちなんだろ? もし無理やり犯したとして、それが相手に知れたら……」 「あぁ……確かに?」 「僕、先輩が誰かに……なんて考えただけでも嫌だし。そんな事になったらきっとその相手を許せないと思う」 「オレも。アキラがそんな事になってたら殴り込みに行く自信あるよ。まぁ、アキラに限ってそれは無いと思うけど」 「……そう、だよな」 二人が真剣な表情で話す様子に、和樹は思わず目を伏せる。 「そんな顔するなよ和樹。だから、未遂で済んでよかったんじゃない? 増田先生も相当酔ってたんなら、このまま無かったことにしちゃえばいいよ」 雪哉の言葉に、拓海もうんうんと同意するように何度も首を縦に振る。 「それにしても、増田先生が彼氏持ち……ねぇ。意外だったな」 「ほんっとそれな! マッスーって全然そう言うの興味無さそうだったのに……相手の人、どんなヤツなんだろ」 確かに、透のことを2年近く側で見てきたが、そんな素振りは全然なかった。彼女が居るのか?と聞いた時も動揺する様子も見受けられなかったのに。 「オレ、アキラにそれとなく聞いてみてやろうか? マッスーの彼氏がどんな奴なのか」 「えっ!それはちょっと……。相手が超絶イケメンとかだったら、凹むし。聞かなくていい」 知りたいけど、知りたくない。そんな複雑な思いが交差する。 そんな事を話しているうちに、あっという間に昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴って、三人は慌てて立ち上がった。 「和樹もさ、いつまでもヘタレてないで勇気だしなよ。気まずいまま卒業してもいいのか?」 「う……っそれは嫌だけど……」 教室に戻りながら、拓海の言葉に和樹は眉を寄せて俯いた。

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