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お見舞い
(透SIDE)
タイミングが悪いことは重なるもので、和樹と話ができないまま数日が過ぎた。
授業の前後で声を掛けようと思っても、和樹が友人と話していたり、逆に自分が他の生徒から質問されたり。ならば、昼休みに! と意気込んで食堂に行けば、こういう時に限って和樹は居ない。
一応、連絡ツールはお互いに知っているものの、なんと切り出せばいいのかもわからず現在に至る。
自分は本当に和樹とシてしまったんだろうか?
絶対に無いとは言い切れないのが怖い。
自分のデスクに突っ伏して悶々としていると、突然頭をコツンと小突かれた。何事かと振り返ると、アキラがにやりと笑いながら立っている。
「なぁ、透。お前、和樹の家知ってたよな? このプリント届けて欲しいって」
「は? えっ? なんで俺が……」
プリントの束を目の前に差し出され、戸惑いながらアキラを見上げた。和樹のクラスは確か、相川が担当していたはずだ。今の自分は副担でもなんでも無いから、和樹の家に行けと言う意味がわからない。
「和樹のやつ、昨日から寝込んでるらしくてさ……。プリント渡さなきゃいけないみたいだけど、相川は用事があって忙しいんだと」
話をするチャンスじゃないか、とそっと耳打ちされ、透はますます困惑した。
「あぁ、どうりで姿を見ないと思った。 じゃ、なくて! 俺が行くのはおかしく無いか?」
「大丈夫だって。和樹だってお前が行った方が喜ぶだろうし」
そんな事あるわけがない。でも、確かに二人きりで話すチャンスではある。
でも、なんて? 具合の悪い相手に聞くような内容でもないし、そもそも自分を避けている和樹が会ってくれるかどうかも怪しい。
「ウダウダ悩んでんのは、らしく無いんじゃねぇ? ほら、頑張れよ透センセ」
「お前なぁ……」
パチンとウインクしながら背中を押され、戸惑いながらも立ち上がる。
まぁ、確かにプリントを渡しに行くと言う名目があれば和樹の家に行ってもおかしくはないだろう。
別に、どうしても会いたいわけじゃない。
でも、プリントを受け取ってしまったし、今日はたまたま部活も無い日だったから、仕方なく行ってやるだけだ。
透は自分にそう言い聞かせると、受け取ったプリント渋々自分のカバンに突っ込んだ。
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