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お見舞い3
「ごめん、マッスー……わざわざ」
「いいって。気にするな」
そっと額に触れると、やはり熱い。
「薬はちゃんと飲んでんのか? 飯は?」
「んー、実はあんま食欲無くってさ……薬は一応飲んだけど」
床に散乱したペットボトルに、食べかけのヨーグルト。捨て直すのも億劫だったのか栄養ゼリーの空がゴミ箱の側に転がっている。
聞けば両親は仕事でいつも帰りが遅く、姉は友人と旅行中。和樹は風邪を引いたのは久しぶりだと言う。
「たく……。なんでもっと早く言わないんだ。知ってたら色々買ってきてやったのに」
「え? マッスーに連絡したら来てくれたわけ?」
「……ッ」
きょとん、とした顔で見上げられ、透は思わず言葉に詰まった。
「……そ、そんな事より、とりあえずこれ、置いておくから」
誤魔化すようにカバンからプリントを取り出すと、和樹の机にそっと置いた。
散乱してはいるものの机の上には沢山の参考書が並べられていて、努力の痕跡を垣間見た気がした。
「お前、頑張ってるんだな。何処か行きたい大学とかあるのか?」
「マッスー、余計に熱が上がりそうなこと言うなよ」
ははっ、と力なく笑う和樹の顔色は相変わらず悪い。
確かに、病人に今する質問では無かった気がする。
「じゃぁ、俺帰るな。早くよくなれよ」
これ以上長居をして負担を掛けたらまずいと思い立ち上がろうとして、不意に服の裾を引っ張られた。
バランスを崩しふら付いた所を引き込まれ、和樹の腕に抱き寄せられる。
「お、おいっ! なにす……っ」
「少しだけ、このままでいてよ」
燃えるような体に抱かれ、透は戸惑いに体を強張らせた。
朧気だった記憶がフラッシュバックして蘇り、カッと体が火照る。
あの時は酒が入っていたし、相手は男で、しかも酔っていた。けれど今は違う。
素面の自分がこうして和樹の体温を感じているのだ。
「ね、お願い……何もしないから」
「な、何もって……っ」
意味深な言葉に動揺し、心臓が激しく早鐘を打つ。
まさか、やっぱり……?
いや、そんなはずはない。
和樹はただ寂しいだけだ。熱のせいで人恋しくなってるだけだろう。
きっと、そうだ。そうに違いない。
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