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揺れる思い 5

11月も後半に入るといよいよ本格的な受験シーズンが到来し、和樹達3年生の教室もピリついた空気が流れ始めた。 和樹の通う明峰高校は進学校というわけでは無い。勿論就職するものも多くいるが、大半は大学受験をする方向で話が進んでいるようだった。 中には推薦入試などで既に進路を決めている生徒もいるようだが……。 あの日以来、何かと忙しく、透とはまともに話も出来ていない。須藤の事が未だに好きであろう透の気持ちを考えたら、自分がしゃしゃり出るのが迷惑な行為なのでは? と思えて、最近は連絡すら控えるようになっていた。 後数カ月もすれば卒業して透とも会えなくなってしまう。自分の思いを伝えずに卒業するのは辛いけれど、自分の我儘を押し付けて透をこれ以上困らせるわけにはいかない。 そんな事を考えながら悶々と過ごしていたある日、同じクラスのナオがビックニュース! と叫びながら教室に飛び込んできた。 「ねぇねぇ聞いて。今、他のクラスの子から聞いたんだけど。相川先生、3組の女子とラブホに入ってくの見たって子が居るんだって!」 興奮気味に話すナオの言葉に、クラス中が騒然となった。 「え、でも……相川って、須藤先生と結婚してるんだよね? え、浮気って事?」 「うっわ、サイテー。須藤先生可哀想」 「でも、それって須藤先生知ってんのかな? 先生の耳に入ったら最悪だよね」 口々にそんな言葉が飛び交う。 相川が浮気? もしそれが事実なら、須藤はどうなる? と、言うかその情報を透は知っているのだろうか? もし、その情報が透の耳に入ったら彼はどうするんだろう? 須藤が泣いて透に助けを求める? 透は優しいからきっとそんな彼女を突き放したりしないはずだ。 透があの女の肩を抱き、キスをして……。そこまで考えてゾクリと背筋が凍った。 そんな未来は絶対に嫌だ。 透は……自分の物なのに。 なんて考えるといても立っても居られなくなり、気付いた時には足が勝手に動いていて、和樹は教室を飛び出していた。

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