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揺れる思い 5
「透センセーやらしいなぁ、誰もいない保健室でナニしてたんだ? ん?」
「なっ!? なにもしてないからな!? 変な事言うなよ」
先ほどの行為が見抜かれているようで、ブワッと体温が上昇したのがわかった。恥ずかしいのと居た堪れないのとで透は慌てて布団を目深に被る。
心臓が痛いほど脈打っていて、きっと耳まで真っ赤になっているだろう事が容易に想像できた。
「フハッ、でっかい芋虫みたいだな。ウケる。ま、いいや。そう言う事にしておいてやるよ。 ほんっと顔に似合わず真面目だなぁお前」
「五月蠅い! 顔に似合わずは余計だろ」
布越しに頭をポンと叩かれて、布団から目元だけ出して見上げれば、アキラがいつになく真剣な顔をして透を見降ろしていた。
「俺と居る時くらいは素直になれよ。気になってるんだろ? あいつの事」
「なっ、別に……俺はっ」
反論しようとして言葉に詰まる。
確かに、全く気にならないと言えば嘘になるが、それを口にするのは憚られた。
だって、それはまるで好きだと言っているようなものではないか。
黙り込んでしまった透を見て、アキラは呆れたように溜息を洩らして苦笑する。
「ま、なにはともあれ元気そうで安心したよ。倒れたって聞いてびっくりしたんだからな! コッチの事は気にせず、あんま無理すんなよ」
それだけ言うと、アキラはヒラヒラと手を振り部屋から出て行ってしまう。
再び訪れた静寂に、透はゆっくりと体を起こすと大きく息を吐き出した。
一人になった室内でドクンドクンと脈打つ鼓動を感じつつ、未だに火照りの治まらない頬に手を当てる。
困ったことに和樹とのキスは嫌ではなかった。寧ろ心地良くて、もっとしていたいとさえ思ってしまう程に……。
キスだけで身体が熱くなり、下半身が大変なことになっている。少し触れあっただけで身体が反応するなんて、まるで中高生のようだ。
こんなに感情を揺さぶられる様な事は久しくなかった。
(――俺、やばくね?)
早く職員室に戻って、授業の準備をしないといけないことはわかっていた。でも、下半身の反応が収まるまでは、布団から出られそうになかった。
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