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我慢できない 4
(平常心、平常心……。落ち着け、俺)
自分に言い聞かせながら、努めて冷静に口を開く。
「なんだお前らも此処で飯だったのか」
「うん。俺達座るところ探してんだけど今日混んでてさ、一緒に座ってもいい?」
いうが早いか、流れるような動きで和樹が隣の椅子を引いた。それに続いて、雪哉が和樹の隣側へ、拓海はアキラの隣の席へ腰を掛ける。
「おいおい、俺らはまだいいなんて言ってないぞ?」
「いいじゃないか透。丁度空いてたんだし」
自分の恋人が隣に来て、アキラは嬉しそうに頬を緩める。
「アキラ。だせ―顔になってる」
「んなっ? ハル、酷くないか? 彼氏様に向かってだせぇとはなんだ」
「事実だし」
拓海の言葉に、アキラはムッと眉を寄せた。
「相変わらず仲いいね」
その様子を眺め、雪哉がフッっと表情を緩める。一時期は拓海とギクシャクしていたようだったが、取り敢えず今は良好な関係を築けているようで安心した。
「そうだ。アキラセンセー。今度の土日暇?」
早速唐揚げを頬張りながら突然和樹が、自分にではなくアキラに向かって尋ねた。
和樹がアキラの予定を聞くなんて珍しいことがあるもんだ。何か裏があるんじゃないだろうか?
「あ? 土日? 今のところ予定は入ってないけどどうした?」
「実はさ、勉強教えて貰いたいんだ。拓海と一緒に。出来れば泊りがけがいいんだけど……」
言いながら、チラリと和樹が一瞬こちらを見た気がした。
自分に打診しないのは断ることがわかっているからだろうと瞬時に判断する。
コイツ、絶対確信犯だろ。アキラが拓海との泊りがけ勉強会なんて魅力的なイベントを断るわけがない。
となると――。
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