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我慢できない 5
「泊りがけの勉強会? あー、いいけど俺ん家散らかってるしな……。そうだ! 透ん家に行こうぜ。コイツん家広いし」
「お、おいっ!アキラ何言いだすんだ!」
言うと思った! アキラの家はぶっちゃけゴミ屋敷だ。イケメンでスペックが高いくせにそういう所が昔からズボラで、部屋は足の踏み場もないくらいに汚いし、他人を家に上げることは絶対にない。
だから、話を絶対振って来るとは思ったけど! マジで振って来やがったコイツ!!
「え、マッスーの家行っていいの? やった」
案の定、和樹は目を輝かせた。
「いや、無理だって」
「どうしてだよ。部屋が汚いとか? そんなの全然気にしねーよ」
「そうじゃなくて……」
何か用事があるのか? と言われたら言葉に詰まる。別に用事があるわけじゃない。
ただ、和樹と二人きりになるのが嫌なのだ。正直気まずくて仕方がない。
そもそも教師の家に生徒が泊まりに来るとか普通に駄目だろう。
「勉強だったら、何も泊まらなくったって出来るんじゃないのか?」
「かてー事言うなよ透。真面目過ぎるんだよお前は」
「いやいや、俺は普通だ! アキラが緩すぎるんだ!」
「マッスー……ダメ? 俺らそろそろ真面目に受験勉強やんないとヤバいんだよ。ちゃんとマジで勉強するし、だからさ……」
「っ」
可愛らしい声と仕草。アキラを含めた3人の視線が一斉にこちらに集中する。
唯一雪哉だけはその様子を半ば呆れたような目で見ていたのだけど――。
そんな目で見られたらなんだか断り辛い。
「……わかったよ」
「マジで!?」
「ああ。ただし! 一晩だけだからな!」
「やった! マッスーサンキュ」
心底嬉しそうな顔で笑う和樹のその笑顔の裏に、悪魔の尻尾が見えるような気がするのは何故だろうか。
「……先生も大変ですね」
隣で雪哉がボソリと呟くのが聞こえたが、透は聞かなかった事にして溜息を吐くのだった。
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