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眠れぬ夜は君のせい 11
(全然、眠れなかった……)
結局、透は悶々としてしまって明け方近くまで眠る事が出来なかった。
思い出さないようにと努めてみても、和樹の手つきや舌の感覚が鮮明に蘇ってきてしまい、どうにもならなかった。
しかも、そのせいですっかり目が冴えてしまって、ベッドの上で一人見悶えていたらいつの間にか空が明るくなっていた。
自分の隣ですやすやと気持ちよさそうに寝息を立てている和樹が憎い。
「くそっ、なんだよ、その幸せそうな顔。……しかも、結局いつの間にか同じ布団に潜り込んで来やがって……」
薄っすらと差し込む早朝の柔らかな光の中、ぐっすりと眠っている和樹の寝顔を見つめた。昨夜とは打って変わって穏やかであどけない表情をしている。
昨夜、自分はコイツと……。次第に脳裏に蘇って来る昨晩の痴態を思い出し、ブワッと一気に顔が熱くなる。
不可抗力とはいえ、もしかしたら隣のアキラたちに聞かれてしまうのではないかと言う状況に興奮してつい、和樹の行為を受け入れてしまった。
しかも、途中から声を抑える事も出来ずにあんなに乱れてしまうだなんて……。思い返すだけでも恥ずかしいあれやこれやが頭の中に流れて来て死にそうだ。
穴があったら入りたい。むしろ、穴を掘って埋まりたい。
透は羞恥心に耐え切れず、和樹の腕の中から這い出すようにしてそっと抜け出した。
(そうだ、シャワー浴びてこよう)
熱い湯を浴びてさっぱりすればきっと、この恥ずかしさからも解放されるはず。
そろりと起き上がり、音を立てない様にベッドを抜け出すと慎重に着替えを手に取って風呂場へと向かう。
「はぁ、何やってるんだよ俺は……」
自嘲混じりに呟きながら、ふと目を上げると、大きな洗面台の鏡に自分の姿が映っている。
「…ッ」
その姿に息を呑んだ。いつの間に付けられたのか、鎖骨以外の場所に赤い痕がいくつもある。
まるでマーキングのようなキスマークに唖然とした。
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