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嫉妬とすれ違い3

ああいうスキンシップは本気で困る。もし、アキラや拓海に見られていたらどうす―― 「なんだ。もっとイチャイチャすんのかと思ったのに」 「!」 突然聞こえてきた第三者の声にハッとして振り向くと、そこにはいつの間に起きて来て居たのか、ニヤニヤと笑いながらアキラがカウンター越しにこちらを覗いていた。 「……ッ、び、びっくりした……」 「いや、こっちのセリフだし。朝っぱらからお盛んだねぇ」 「な、違ッ……」 咄嵯の言い訳が浮かんで来ずに口をパクつかせていると、クスリと笑われて頬が熱くなる。 「俺の事は気にせずいちゃついてくれてよかったんだぞ?」 「あのなぁ……お前と俺は違うんだよ。……たく。……アキラのお陰で昨夜は大変な事になったんだからな」 「え? 何?」 思わずぼそりと呟いた最後の方の言葉は、どうやらアキラには聞こえなかったようだ。聞き返されて透はブンブンと首を振った。 あんな事、口が裂けても言えるわけがない。誤魔化す様に視線を逸らすと、ちょうど目の前にある鍋が噴きこぼれそうになっていて慌ててスイッチを切り、火を止める。 危ない、危うく焦がしてしまうところだった。 「あー、そういや渡瀬は? まだ寝てんのか?」 聞いてしまってから気が付いた。アキラはにんまりと笑みを深めるとわざとらしくカウンター越しに身を乗り出してくる。 「ハルは昨夜ちょっとヤり過ぎて、疲れてるみたいだから、もうしばらく寝かしといてくれよ」 「……ッへ、へぇ……ていうか、人ん家でナニやってんだよ」 藪蛇だった。平常心を装うとしても、どうしても声が上ずってしまうのを止められない。 「そりゃ、恋人と一緒の部屋でスる事と言ったら……なぁ?」 「……」 同意を求められて、なんとも居た堪れない気持ちになる。もう少し自重しろとか、一晩位我慢しろよとか色々言いたい事はあったが昨夜の自分のアレコレを思い出してしまい、何も言う事が出来なかった。

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