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嫉妬とすれ違い 4
「……とりあえず飯、もうすぐ出来るから」
微妙に開いてしまった間にアキラは何かを察したのか、ただでさえニヤついていた顔を更に緩めた。
「おやおやぁ? やっぱ夕べなんかあっただろ」
「は、はぁ? なっ、なんもないって」
「ホントか?」
笑みを深めながらカウンターから身を乗り出してきて、じいっと見つめられる。
「本当も何も……俺と和樹はそんなんじゃないし……」
居た堪れなさ過ぎて思わず視線が泳ぐ。
「怪しいなぁ……」
「あれ? アキラセンセー身を乗り出してどうしたん? 何々、なんの話してんの?」
そこに、タイミング悪く和樹がやって来て、二人の会話に割り込んできた。
やばい、コイツを口止めしておかないとおかしなことを口走るかもしれない。
そう思った透はすかさず和樹の腕を掴んでキッチンへと引きずり込んだ。
「……ちょぉっと和樹、朝飯作んの手伝えよ」
「えっ?」
いいの? と何を勘違いしたのか目を輝かせる和樹に胃の辺りがキリキリと痛み出す。そんな二人の様子を眺めてアキラはまたにやりと笑ってみせた。
「まぁ、程ほどにしとけよ。お邪魔虫は退散して、ちょっと寝なおして来るわ。飯出来たら教えろよ。別に急ぎじゃねぇからゆっくりでいいぜ? あ、あと、あんま声デカいと隣の部屋まで聞こえるから気を付けろよ」
「何の話だアホッ!」
こういう時のアキラは本気で性格が悪いと思う。絶対、反応を見てからかって遊んでいるに違いない。
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