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嫉妬とすれ違い 6
(何もそんなあからさまに残念そうな顔しなくったっていいだろうが。俺が悪いみたいじゃないか)
胸の奥にモヤッとしたものが広がっていく。しかし、それを上手く消化することが出来ない。
「さ、取り敢えず飯食ったら、また勉強会再開するぞ」
「えっ? 昨日で終わりだったんじゃないの!?」
「お前の脳みそは湧いてんのか? 何のために泊ったんだ?」
「う……」
「夕方からちょっと用事が出来たから、あまり遅くまでは出来ないけど、みっちりしごいてやるから覚悟しとけよ? なんたって、泊りがけの勉強会なんだから、きちんと身になって貰わないとなぁ?」
意地の悪い笑みを浮かべながら和樹を見ると、彼は引き攣った笑みで応えた。
それから、ある程度朝食が出来たところで、アキラと拓海を起こし、みんな揃って朝食を食べた後、やはり嫌そうな顔をした拓海を引き摺るようにして勉強を再開させた。
やっぱり、何かを人に教えている時が一番楽しい。特に自分が担当する数学なんかは苦手意識を持つ学生が多いから、解けた時や、今までわからなかった問題の意味が理解できた時のにハッとする顔を見るのが好きだ。なんだかんだで数学は繋がっているから、一つがわかれば自然と他の問題も解けるようになっていく。教える立場として、それがとても嬉しい。
だからこそ、やっぱり和樹との線引きはきちんとしておかなくてはいけない。
ここ数日ちょっとばかし和樹に振り回され過ぎてしまった。流されていいはずが無い。自分は教師なのだから――。
そう自分に言い聞かせながらも、透は心のどこかでは少しだけ期待している自分が居る事にこの時はまだ、気が付いていなかった。
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