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嫉妬とすれ違い 8

「……一般常識だろ? んな事よりお前、子供達はどうしたんだ?」 「お母さんたちが預かってくれてる。旦那は何処行ったか知らなーい」 そう言いながら、当然の如く腕を組んできた。 「よせ。誤解されたら困るだろうが」 慌てて腕を振り払い距離を取る。奏多が一体なにを考えているのか皆目見当も付かないが、こんな風にベタベタされて素直に喜べる間柄ではもうない。 「相変わらず頭が固いのね」 「緩々のノーミソしてるお前よりマシだろ」 「それ、酷くない?」 酷いのは一体どっちだ? 喉元にでかかった言葉を飲みこみ、小さく溜息をつく。 このやり取りすら億劫だと感じてしまう程に、彼女に対して何の感情も湧いてこなくなった。 自分の中で奏多はもう過去の女でしかない。そう確信した透は席に着くと、店員にビールとつまみになるものを適当に見繕って注文し、改めて奏多を見据えた。 「で? 話ってなんだよ」 「そんな急かさないでよ。せっかくいい雰囲気のお店なのに」 池袋の東口から出て数分。路地裏にひっそりと看板を出しているその居酒屋は完全個室が売りの店で、客層も若い女の子などはほとんど居らず、落ち着いて話が出来る穴場スポットだ。 古民家風の店内は間接照明で淡く照らされ、カウンターテーブルの奥にある大きな水槽がゆらりと揺らめく度に反射して、色とりどりの魚達が幻想的に泳いでいる。 この隠れ家的な雰囲気が好きで、奏多と付き合っていた頃は確かによく一緒に飲みに来ていた。 しかし、今となってはその思い出さえも懐かしいと感じる。

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