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嫉妬とすれ違い 10

翌朝、透は若干寝不足気味の目を擦りながら、欠伸を噛み殺しつつ学校へと向かって歩いていた。 昨夜は夜遅くまで奏多の愚痴に付き合い、ベロベロに酔っぱらいながら散々喋り倒してようやく満足した彼女をタクシーに押し込んでから家に戻った。 あんなに気の乗らない食事は久しぶり過ぎて、正直あまり覚えていない。 「あー、頭痛ぇ。つか、眠ぃ」 途中何故か酔っぱらった彼女に豊満な胸を押し付けられたり、擦り寄って来られたりしたが何の魅力も感じなかったし不快感が増すだけでしかなかった。 透にとって奏多は既に過去の存在でしかなく、そういう対象としては見る事が出来ないという事に改めて気付かされた。 しかも最悪な事に、家に戻ってからの方が更に大変だった。 アキラたちが居たので汚れたシーツ類がそのままだったことに気が付き、慌てて洗濯機に放り込んだのだが、そのせいで悶々として眠れなくなってしまった。 だって、嫌でも思い出してしまうのだ。欲に塗れた飢えた獣のような瞳や耳元で囁かれた淫靡な言葉。声が出せない状況での疑似的な行為。 そして、初めて知った快楽の味が脳裏を過る。 「――はぁ、流石にヤバいだろ」 本物の女性よりも、和樹との行為に興奮を覚えただなんて口が裂けても言えないし、出来れば認めたくない。 「おはよ、マッスー!」 「おー」 声を掛けてくる生徒達に応えながら敷地内に入り、職員室へと向かい歩いていると背後から弾丸のような何かが勢いよくぶつかってきて、危うく転びそうになった。 「ぅわっ、っと……和樹ってめっ! 危ないだろうがっ!」 「えへへ、バレたか。おはよ、マッスー」 「バレたか、じゃないだろ――っ」 と思いつつ和樹と目が合い、前夜の光景がフラッシュバックして蘇り、透は狼狽えた。なんで今、思い出すんだ。 急に黙り込んでボッと顔を赤くした透を見て、和樹が一瞬驚いた顔をする。 だがすぐに表情を崩した。

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