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嫉妬とすれ違い(和樹SIDE)

(和樹SIDE) 今日は朝から透の可愛い顔が見れたと、ウキウキしながら歩いていると、透と出会った場所の近くにスマホが落ちていることに気が付いた。 シンプルな紺色のスマホケースは、透が愛用しているものと確か同じもの。 「あれ? マッスーのだよな? こんな所に落としていくなんて。気付かなかったんかな?」 よくよく考えれば、自分がタックルした拍子に落としてしまったのかもしれない。 後で、返しに行こうかとポケットに仕舞おうとしたその瞬間。 メッセージの着信を知らせる音が鳴り響いた。 (うげ、やっべ。誰だろ?) 反射的に画面を見ると、そこには『奏多』と表示されていた。 奏多……。その表示名を見てドキリとする。 たまたま見えてしまった『昨夜はありがとう、すっごくスッキリしたし、楽しかった。また行こうね』ハートマークの沢山飛んだ文字に一瞬で目の前が真っ暗になった。 頭を鈍器で殴られたような衝撃に思わずよろめく。 昨日、確かに夜は用事があると透は言っていた。 それが、まさか……元カノとだったなんて! (彼女に未練はないと言っていたくせに、一緒にご飯には行くんだ) 胸が締め付けられる。苦しくて堪らない。 スッキリしたってなんだ? まさかとは思うけど、彼女と最後までヤっちゃったのだろうか――? 奏多は美人でスタイルも良くて、透が好きだった女だ。 人妻のくせして妙に距離が近いし、乳もデカい。透が巨乳好きかどうかは知らないが、あの乳で迫られて嬉しくない男なんていないのでは? (俺は拒否する癖に……俺の方が……あの女より、マッスーの事好きなのに……なんでっ) なんで、自分は駄目で彼女はいいんだ!? 自分が男だから?  ぎりっと音がするほど歯噛みして暗くなった画面を睨み付ける。 どうしようもない苛立ちが込み上げてきて、気が付けば来た道を戻って居た。

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