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一歩踏み出す勇気 2

「……ここって」 連れて来られたのは、社会科で使用する資料が沢山おさめられた準備室の一角。 空調が切られているせいで、冷蔵庫の中に居るような寒さだ。 「ここなら誰も居ないし、鍵さえ掛ければ邪魔は入らないだろ?」 「……ああ」 「なに? 期待した?」 「するかよっ!」 「冗談だって。ま、取り合えず座れよ」 アキラはそう言って、暖房のスイッチを入れ、奥からパイプ椅子をニ脚持ってくるとドカリと腰を下ろした。 少しずつ暖かくなっていく室内にホッとしつつ、準備してくれた椅子を引いてアキラと向き合う形で腰を下ろす。 「……で? どうした?」 「……何が?」 「とぼけんなって。和樹と何かあったんだろ?」 単刀直入に問われ、いきなり核心を突かれて、一瞬返答に詰まる。 アキラはこういう所が鋭いから困る。 普段はちゃらんぽらんでテキトーなくせに、妙に勘が良いのだ。 加えて、お節介と言うか、世話焼きな一面もあるので、こうなったら誤魔化すのは難しい。 「水臭いな。俺とお前の仲じゃないか。話せよ透」 じっと見つめてくる視線が、全てを見透かすようで、落ち着かない。 透は観念したように大きく息を吐くと、今朝あった出来事を簡潔に話始めた。 「……ふぅん。つーか、なんだ、お前らまだヤってなかったのか」 「おい、ヤるとか言うな! てめぇの脳内どうなってんだ!」 こっちは真剣に話していると言うのに、あまりにもデリカシーのない発言に透は思わず口を尖らせた。 「だって昨日もイイ雰囲気だったし……、もうとっくに一回や二回は経験があるんかと」 「ねぇよ馬鹿っ。お前と一緒にすんな! 俺はお前と違って下半身で生きてる訳じゃないからな!」 「ひっでぇなぁ。まるで俺が見境ないみたいな言い方するなよ」

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