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一歩踏み出す勇気 5

「自分の心に耳を傾けろと言われてもなぁ……」 グラス一杯に注がれたビールを一気飲みしながら、はぁと思わず大きなため息が零れ落ちる。 和樹はあれから、自分には近づいて来なくなった。恥ずかしい思いをしなくて済むとホッとする気持ちと、どこか寂しいような複雑な気分が入り混じり、胸の奥がモヤモヤする。 この気持ちが何なのか、知りたいけど知るのが怖い。 アキラに指摘された通り、自分が思っている以上に和樹の事が気になっているのは確かで、このままじゃいけないとは思うのだが、どうすれば良いのかわからない。 今日はやけ酒でもして、嫌なことを忘れようと思っていたのに、結局頭から離れず余計に悶々としてしまって、これでは逆効果だ。 「たく、何をグダグダと……」 「そんな事言うなよ、理人ぉ……俺、どうしたらいいと思う?」 隣で同じように飲んでいる従兄弟の理人に泣きつくが、彼は呆れ顔でこちらを見てきた。 従兄弟同士年が近く、毎月1度こうして行きつけのバーで酒を飲みながら話すのが恒例となっている。 理人は口も目付きも悪いが、透にとっては何時まで経っても頼れる兄貴分のような存在だ。 こう言う話はその道のプロに聞くのが一番早いだろうと、半ば強引に呼び出したのだ。 それにしても今日の透はいつもより酔いが回っているようだ。顔は真っ赤で目は潤んでいるし、呂律が回っていない。 そんな透の様子を見た理人が眉をひそめた。 「たく、何かと思えば……。透、お前は頭でごちゃごちゃ考えすぎだ」 理人の鋭い視線が突き刺さる。透はうっと言葉に詰まった。 確かに、昔から物事を深く考えすぎて、なかなか行動に移せない性格だ。 それは自分でもよくわかっている。 だが、今まで生きてきて、そう簡単に性格を変える事なんて出来ない。 「そいつはお前とヤりたがってるんだろ? だったら一度寝てみろよ」 「え? いやいや、無理だし!」 あまりにぶっ飛んだ発言に、透はぎょっと目を剥いた。

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