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一歩踏み出す勇気 8

とは言え、今更何をどうしたらいいかなんて見当がつかない。勢いに任せて店を出たものの、一体どうやって切り出したら良いのだろう。 和樹の家へ行くには遅すぎる時間帯だし、メールやアプリで連絡するのも違うような気がする……。 悶々としたまま歩いているうちに、いつの間にか自宅マンション近くの公園まで来てしまっていた。 そう言えば、以前此処で和樹に会ったなぁ。なんて考えながら歩いていると、50メートルほど離れた所に和樹の姿を見つけた。 バスケ部の時に使用していたジャージを羽織り彼はジッと上を――自分の自宅のある付近を見上げている。 その姿を見た瞬間から、ドクンドクンと心臓が締め付けられるように早鐘を打ち始めていた。 だが、こちらには気付いていないのか、和樹はマンションから視線を外すと反対側の方向へ向かって歩き出した。 透は咄嗟にその背を追いかけ、駆け出していた。アルコールが入っているために少々足元が覚束ないが、そんな事は気にしている場合ではない。 「和樹ッ!」 前につんのめりそうになりながら叫ぶと、振り返った和樹の目が大きく見開かれる。 「マッスー……。なんでこんなとこに」 「そりゃ、俺のマンションの前だからな。それより、お前こそこんな夜更けに突っ立ってどうしたんだよ」 「そ、それは……その……っ」 視線を泳がせて言い淀む和樹の肩を掴んでこちらを向かせる。その身体はすっかり冷え切っていて、恐らく長い事外気に晒されていたであろうことは容易に想像が付いた。 寒さのせいなのか、それともまた別の理由なのか、頬を赤く染める彼の唇は少し青ざめて見える。 一体いつからここに居たのだろうか? 連絡の一つくらい寄越してくれたらもう少し早く戻って来たのに。 なんて考え、今はお互いに気まずい状況だったのを思い出し、思わず失笑が洩れた。

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