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秘密の関係

風呂から上がり、やや緊張した面持ちでリビングへ戻ると、和樹はソファの上で両手を膝に置いたままカチコチに固まっていた。 その姿が何とも言えず可笑しくて、つい笑ってしまいそうになるのを堪えながら、透は冷蔵庫を開けるとその中にあったミネラルウォーターを取り出し和樹の首元に押し当てる。 「ぅひゃっ!?」 「なに石像みたいになってるんだよ」 突然の事に驚いて飛び上がる和樹を見て、我慢できずに噴き出してしまった。 「ちょ、マッスー酷くね?」 「ふはっ、悪い悪い。お前があまりにもガッチガチに固まってるから解してやろうと思って」 悪戯っぽく笑って見せると、和樹は拗ねたように唇を尖らせながらプイとそっぽを向いた。 「……そりゃ、好きな人の家に二人っきりなんだから緊張くらいするじゃん。しかもあんな事言われた後だし……」 ボソリと呟かれた言葉に、透はふ、と柔らかい笑みを零しゆっくりと和樹の隣に腰をおろした。 「なんだよ、意外と可愛いとこあるじゃないか」 「……マッスーは全然余裕そうだよね」 「ばーか、んなわけないだろ? 俺もいっぱいいっぱいだっつーの」 言いながら、膝の上に置いてある彼の手をするりと撫でた。 ハッと目を大きく見開いた和樹の手を自分の手で包み込み、指を絡めて握りしめると、唇を寄せて触れ合うだけのキスを一つ落とす。 「……っ」 繋いだ手を自分の胸元へと引き寄せると、ドクンドクンと激しく脈打つ鼓動が伝わってくる。 「ほら、わかるか? 俺も今、凄いドキドキしてる」 「……うん」 素直に返事をした和樹は、そのまま透の肩に頭を預けるようにして寄りかかってきた。 密着した事で更に早鐘を打つ互いの心音がシンクロしていく。

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