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秘密の関係 16

「――……ここ、この問題がどうしても解けなくてさ」 「あぁ、これは……」 翌日、約束の時間ぴったりに現れた和樹はテキストを開くなり、すぐに分からない問題を教えてくれとせがんできた。 そんなにも切羽詰まっているのか? と少々心配になりつつ質問に答えていく。 「この問題の場合はこの公式を当てはめるんだ――」 「あ、なるほど」 「んで、こっちはこの公式じゃなくて……」 説明しながらチラリと和樹の様子を窺う。彼は真剣な表情で問題を解いている。 こうして見るとやはり以前より大人びた表情をするようになった。意外に筋肉質で身体も引き締まって見えるのはやはりバスケ部だったからだろうか。 普段はへらへらしていてまだまだガキだなと思うのに、時々見え隠れする男の色気みたいなものにドキッとする。 ダメだ、何考えてる。集中しなければ。 透は邪念を振り払うように小さく首を振った。 「マッスー、どうかした? つか、顔、真っ赤」 「えっ!? それは多分、あれだ……暖房が少し暑くって」 不意に顔を覗き込まれ、慌てて誤魔化すように服をパタつかせる。 「ふぅん、そう?」 何か思うところがあるのか、和樹がにやりと笑い、手を伸ばしてくるのでその手を払いのける。 「おい、何やってんだ」 「暑いんなら、脱がせてやろうかと思って」 「いやいい。自分で脱ぐし! と言うか、勉強しないんなら帰れよ」 少し怒ったように咎めると、和樹はわざとらしくシュンとしてみせた。 「だって……せっかく二人きりなのに……なんか勿体ないじゃん」 「……っ」 そう言ってじっと見つめられると何も言えず、透は黙り込んでしまう。 和樹のこういうところが本当にズルいと思う。 「……と、とにかく! 問題全部解き終わるまではお預けだからな!」 「えぇえ」 「ええ、じゃない! わざわざ教えてやってんだぞ? 時間はあるようでないんだから」 透はそう言うと、和樹の目の前に人差し指を突き立てた。 「ちぇ、わかったよ……」 怒られてシュンとしつつ、和樹は諦めてシャーペンを握りなおした。

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