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秘密の関係 和樹SIDE 8

「別に身体の関係が無くったって……、心が満足してるならそれでいいんじゃないかって、思ってたんだけど……」 「けど……?」 そこで言葉を区切ると、じっと見つめられごくりと喉が鳴る。 絡まる視線に期待が高まる。もしかして、この流れは……――。 透が口を開きかけたその瞬間、テーブルに置いてあった透のスマホが鳴った。 (誰だよ! 今、いい所だったのに!!) パッと手を離し、背を向けて電話に出た透の後姿に思わずムッと眉間にしわが寄る。 「もしも……『あ! 透ちゃん出た! ねぇねぇ、今度の土曜日暇!?』」 「!?」 男とも女ともつかないキンキン声がこっちにまで聞こえて来る。 (ほんっと誰!?) 「あー、えっと……っ今週は……」 『土曜日ウチでクリパしようと思ってるの! だから、透ちゃんも来てね。あぁ、噂の彼も一緒に! 約束よ、待ってるから~っ!!』 「えっ、あっちょっ! ナオミさんっ!」 一方的に喋りたくって、切られた電話に唖然としていると、透は深い溜息を吐いてそっとスマホをテーブルに置いた。 「マッスー……ナオミさんって誰? なんか凄い人だったんだけど」 声だけでも、なんだかヤバそうな雰囲気が伝わって来る。 透は額に手を当てると天を仰いでもう一度深く嘆息した。 「あぁ……ええっと……。行きつけのバーのママ、みたいな?」 「みたい。って」 ママではないのか? と言うか、行きつけのバーがあるんだ。 ツッコミどころが在り過ぎて、どこから突っ込んで良いのか解らない。

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