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楽しい夜は 5
「あー、えっと……俺の従兄弟だよ。あんな顔してるけど、怖くないって」
「い、従兄弟!?」
人をスクリーン代わりにして、恐る恐る理人の方を覗き込む姿が何となく可笑しい。
「マッスーに、ヤクザの従兄弟が……」
「あ? 聞こえてるぞ」
「やべっ」
地獄耳なのか、和樹の声が大きかったのか、理人がジロリとこちらを振り返る。和樹は慌てて透の後ろに隠れてしまった。
「ったく。一言余計だって……。ごめんな、理人。コイツちょっと空気読めなくってさ。悪いヤツじゃないんだ」
「……」
「うふふ、彼、透君のイイ人なんですって」
「ちょっ、ナオミさんっ! 違っ……」
「あら? 違った?」
否定しようとしたが、楽しそうに笑うナオミの瞳に見つめられ、言葉に詰まる。
「透の? お前……学生とは聞いていたが。そうか、コイツが噂の……」
理人は和樹に興味を持ったようだ。透の背に隠れる様にして縮こまってしまっている和樹を物珍しげに眺めている。
なんだか居た堪れなくて、助け舟をチラッとアキラに視線を移せば、我関せずとばかりに拓海といちゃついていて、透は胃が痛む思いがした。
「まぁまぁ、理人さん。そんなに見たら可哀想じゃないですか。話しはじっくり後で聞きましょ?」
ね? と、穏やかな口調で言いながら瀬名が理人を宥める。ホッとしたのも束の間、
「僕も、透君がネコなのかタチなのか気になるし。ね?」
と、意味深な笑顔を向けられて、透は思わず頬が引き攣る。
「俺、帰ってもいいかな?」
「あらやだ、帰らないでよ。せっかくみんな集まったんだから」
ナオミに、残念そうな声音で言われ、透はがっくりとうな垂れた。
「夜は長いんだし、楽しまないと、でしょ?」
「拷問の始まりな気しかしない……」
深い溜息と共にそう呟いた言葉は、ナオミによる乾杯の音でかき消され、誰にも聞かれる事はなかった。
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