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楽しい夜は 7

「それにしても、透が選んだ野郎があんなガキだったとは」 「ねー、びっくりよね。もう少し擦れてる子かと思ったのに」 酒がだいぶ進んで来たのか、理人とナオミが意気投合し始めている。 理人に至ってはよほど和樹の事が気になるのかソワソワと落ち着きがない。……なんというか、意外だ。理人がそんな風に他人に興味を持つなんて。 「アタシちょーっとお話して来ようかしら」 「あっ、ちょっ!ナオミさんっ」 「大丈夫。少し話をするだけよ」 ナオミが席から立ち上がるのと同時に、ブランデーを持ってカウンターに座る和樹の元へ向かう。 パチンとウィンクをされたが、不安しかない。何を考えているんだろう。まさか変なこと言わないだろうな。 不安で仕方が無くてなんだか落ち着かない気分になって来る。 それに……。 「なんで理人までソワソワしてるんだ」 「別に。ソワソワなんてしてない」 指摘すると視線を逸らすが、明らかに挙動不審だ。 「理人さんは、自慢の従兄弟を上手くたらし込んだ男がどんな奴か知りたいんですよ」 「おい、瀬名。憶測でものを言うな! 俺は別に……っ」 「いいじゃないですか。本当の事でしょう?」 「……」 沈黙を肯定と受け取ったのか、瀬名はくすりと笑うとグラスを煽る。 理人はバツが悪そうに舌打ちをしたが、それ以上は何も言う事無く、黙ってしまった。 「どうでもいいけど、たらし込んだとか言わないで下さいよ。 なんか恥ずかしいし」 「事実だろ? アイツ、随分グイグイ来てたじゃないか」 「それは……っそう、だけども」 アキラにまで言われて戸惑う。確かに和樹の勢いに押されて、流された自覚はあるが、はっきり言われると何とも言えない気持ちになった。

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