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楽しい夜は 14

「そう警戒するな。悪いようにはしねぇよ。それにしても……まさか透がノンケの童貞食いだったとは知らなかったな」 「へ? ど、どうてい……?」 理人は独り言のように小さく何かを呟き、一人で勝手に納得した様子でうんうんと首を縦に振った。 「もー、何やってるんですか理人さん。ちょっと目を離すとこれなんだから。高校生相手に酔っぱらって変な絡み方しちゃダメですって」 「別に俺は酔ってなんかねぇぞ」 「いやいや、酔ってるでしょ。ごめんね、和樹君。|理人さん《この人》の言った事は気にしなくていいから」 「は、はぁ……?」 自称あの怖い人の恋人だと言う瀬名が、すかさず割って入って来て、肩に回されていた手が外される。 童貞食いって、誰が? え、透が?  どういう事だ? 和樹の頭の中はハテナマークでいっぱいだ。 「あはは! あー、お腹痛い。理人ってば相変わらず面白いわね」 皆が困ったように苦笑する中、ナオミだけが爆笑しすぎて涙まで浮かべている。 「ごめんね和樹君。瀬名君も言ってたけど気にしなくていいから。理人っていっつもああなのよ」 「はぁ……」 ナオミは笑い過ぎて乱れた呼吸を整えると、目尻に溜まった涙を指先で拭った。 気にしなくていいと言われたが、気にならないわけがない。 だって、今の話の流れだと透は―――。チラリとカウンターに視線を向ければ、透は机に突っ伏してウトウトしているようだった。 「マッスーって、実は初めてじゃなかったんかなぁ……」 ぼそりと呟いた言葉に、一同は顔を見合わせププッと一斉に噴き出した。

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