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楽しい夜は 17

「いってぇ……ちょっと何」 「ばーか。嫌に決まってるだろうが……」 ポソリと呟けば、和樹が驚いたように目を丸くする。 その様子になんだか恥ずかしくなり、透は誤魔化すようにコホンと咳払いをしてタイミングよく湊から目の前に差し出された水を受け取るとグイッと煽った。 まったく。紛らわしい真似をしてくれる。こちとら心臓止まるかと思ったんだからな。 冗談でよかったとホッと安堵の溜息を吐きつつ、隣でニヤニヤと破顔する和樹の足を蹴飛ばした。 和樹は痛いと言いながらも何処か嬉しそうで、それがまた腹立たしい。だが、アキラ達の好奇の目に晒されるのも嫌なので文句を言うのはぐっと堪えた。 「うふふ、さぁて透ちゃんも起きた事だし! みんなでケーキ食べちゃいましょうか」 パンと手を叩いてナオミが立ち上がる。 それに合わせるようにして、湊が慣れた手つきで切り分けられたケーキと、シャンパン入りのグラスをみんなの元へと運んでいく。 「メリークリスマス、マッスー」 「ん? あぁ……メリクリ」 未成年用に注がれたシャンメリー入りのグラスを片手に近づいて来た和樹と、カチンと小さく音を立てて乾杯を交わす。 甘さ控えめのクリスマスケーキは食べやすく、口の中に広がるクリームの優しい味に自然と笑顔になった。 なんだかんだと騒がしかったけれど、こうして皆で過ごす時間はとても楽しくて、あっという間に時間は過ぎていく。

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