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こっちを向いてよ

「ん……っ、は……っ」 静かな室内に、衣擦れの音が響く。 腰を高く抱え上げられた状態で後ろから突き上げられ、沸き起こる快感に思わず声を洩らしてしまいそうになるのを透は必死に堪えていた。 あの日以降、定期的に透の家にやって来ては、ひとしきり勉強をして、そのままベッドへなだれ込むという日々が続いていて。 冬休みに入ってからと言うもの、その頻度は更に増えているような気がする。 そして今日も例によって和樹に押し倒され、なし崩しに行為が始まってしまったのだが―――。 「は……、ん、んん……ッ」 「マッスー……」 和樹が腰をガッチリと抱いたまま身体を倒して背中にのしかかってくる。熱を孕んだ声で名を呼ばれ、ピクリと肩が震えた。 彼が言いたいことは大体わかっている。きっと次にくる言葉は”こっち向いて”だ。 「な、なんだよ」 「こっち、向いてよ」 「……ッ」 あまりにも予想どうり過ぎて、笑ってしまいそうになった。けれど気を緩めたらあられもない声を出してしまいそうで、透は小さく首を振った。 「や、だ……っ」 「どうして?」 「どうしてって……」 突き上げてくる合間に、切なげに訊ねられ言葉に詰まる。 初めて身体を合わせた日。後背位でしたいと言いだしたのは自分だった。 理由なんて単純なもので、感じてぐちゃぐちゃになってしまっているであろう自分のみっともない顔や、喘ぎ声を聞かされて和樹が途中で萎えてしまうんじゃないかと不安だったからだ。 ただ単に恥ずかしいから。と、言うのもあるが。 最初の方は和樹も素直に透の意見を受け入れてくれていたものの、最近は余裕が出てきたのかしきりにこっちを向けと言ってくることが多くなった。

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