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こっちを向いてよ 6

「で? なんで、そんなに嫌だったんだよ?」 「……ッ」 行為後の気だるさに包まれながらぐったりとベッドに身体を横たえていると、不意にそう訊ねられた。 「どうでもいいだろ、そんな事」 「どうでも良くないよ。だって、今日のマッスーいつもよりめちゃくちゃ感じまくっててエロかったし」 サイドボードに置いてあるミネラルウォーターを飲みながら、忘れてしまいたい事実を指摘され、ぶわっと羞恥心が込み上げて来る。 「ば、馬鹿っ! もー、さっきのは忘れろって!」 「嫌だ。あんな可愛いマッスー、忘れられるわけないじゃん」 「んなッ!?」 きっぱりと言い切った和樹に思わず面食らう。 「あんなに気持ちよさそうにしてたのに、なんで今までバックに拘ってたんだよ?」 鋭い双眸にまっすぐ見据えられ視線が泳ぐ。 話してくれるまで絶対に逃さないという強い意志が伝わってきて、誤魔化す事が出来ないと悟った透は諦めたように溜息を吐くとぽつりと口を開いた。 「い、嫌だったんだよ」 「何が?」 「俺は、お前と同じ男だし……男のヨガってる顔なんて見たって面白くもなんともないだろ? む、胸だってないし……。お前が途中で萎えるんじゃないかと思って」 言いながら声がどんどん小さくなってしまう。恥ずかし過ぎて、今すぐにでもこの場に穴を掘って埋まってしまいたい気分だ。 「マッスーが男だって、そんなの最初っからわかりきってる事じゃん」 「それは、そーだけど……」 「マッスーが感じてるトコ、其の辺のAVよりヤバかったんで取り敢えず萎える事はないから安心しなよ!」 「和樹ぃ、それあんま嬉しくねぇよ」 大真面目な顔で言われて、思わず苦笑してしまった。本人はフォローのつもりなのかもしれないが、AVと比べられたら、それはそれで複雑な気分になる。

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