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変化 7
「ねぇ、マッスー」
「んー?」
「俺、マッスーの事すげぇ好きだよ?」
「それは知ってる」
何をいまさら……。
「じゃぁさ、マッスーは?」
「えっ!?」
まさか聞かれるとは思って無くて、透は目を丸くする。
「俺のこと好き?」
「……」
改めて問われると戸惑ってしまう。身体の関係があって、今更だとは自分でも思うが、面と向かって言うとなると話は別なのだ。
「え、ええと……」
「うん」
「……嫌いでは、ない」
「ふは、何それ。もう、好きって言ってるようなもんじゃん」
「……そうは言ってないだろ」
「えー? 素直じゃないなぁ」
吹き出す和樹につられて、思わず自分も笑ってしまいそうになる。
そんな他愛も無いやり取りが心地よくて、いつまでもこうしていられたらいいのにと願ってしまう。
だが、だめだ。深みにハマってはいけない。これ以上踏み込んでしまったら、いざ問う時きっと離れられなくなってしまう。
和樹が自分を求めてくれればくれるほど、いつか来る別れを想像して苦しくなる。
自分が教師である以上、本来ならこの関係は成立してはいけないものだ。
自分は和樹にとって曖昧で都合のいい存在でいたいのだ。そうでなければ、困る。
「マッスー? 」
「あぁ、悪い。ちょっとウトウトしてた。つか、今日は何故か休みになったから神社、行こうぜ」
誤魔化すように提案すると、和樹は一瞬きょとんとした表情を浮かべた後、ニヤリと笑った。
「なに? 恋愛成就のお願い?」
「ばーか。お前の合格祈願だっつーの! 車出してやるから。いつまでも浮かれてんなよ」
この時間が少しでも長く続きますように。
心の片隅でひっそりと思いながら、透は和樹の手をそっと握り返した。
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