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変化 9
「ねぇ、誰から?」
「……っ」
吐息が耳にかかり、ぞわぞわした感覚が背中を駆け抜ける。
「あー、もう! しつこいっ! アキラからだよ!」
慌てて耳を押さえ睨みつける。
「へ? アキラセンセー?だったら別に隠す必要なんて……」
「ちょっと重そうな内容だったんで少し動揺しただけだ」
「重そうってなに? まさか、拓海と別れることになったとか?」
「んなわけねぇだろ! ……あー……でも、状況次第じゃ少し距離を置いた方がいい場合もあるかもな……」
透はチラリと和樹を見た。 一体どういう状況で訴えられたのかはわからないが、今朝の騒々しい雰囲気から察するに自分が思っている以上に職員室は混乱した状況だったのだろう。
相川が担当していた生徒と関係を持っていたという噂は結構前から流れていたし、今更かと思わないでもないが……生徒と関係を持っているという点で言えば自分もアキラも同じ立場にある。
「どういう事?」
「……詳しい事は俺にもわからん。ただ、今日は学校に来るなと言われてたから……何かあったって事は間違いないだろうな」
「マッスーは……」
「ん? どうした?」
「……っ、何でもない」
不安げな顔をしてこちらを見上げていた和樹が、何か言いたげに口を開いたがきゅっとそれを引き結んだ。
何を言いたかったのかは大体想像が付いたが、それを言葉に出してしまえば自分たちの関係が終わってしまうような気がして、透も敢えてそれを追求するような事は出来なかった。
終わらせなければいけない関係なのに、終わらせてしまいたくない。そんな葛藤を胸に抱えながら二人はしばらく黙り込んでいた。
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