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春 2

「まぁ、とにかく。引き受けてくれるね?」 「はい……。わかりました」 結局、透は断る理由を見つけることが出来ずに渋々承諾することになった。 「それで、いきなりで悪いんだが……、今日の放課後、早速打ち合わせをしてもらいたいんだ」 「今日ですか!?」 「何か用事でもあったのかい?」 「いえ。それは……ありませんが。すみません。急だったので……」 「いや、こっちこそすまない。じゃぁ、頼んだよ」 「はい」 透は小さく頭を下げてから、校長室を出た。 今年は久しぶりにクラスを受け持つことになってただでさえ忙しいというのに教育実習だなんて。 しかも今日! なぜもっと早く言ってくれなかったのだろう。 アキラも自分に一言相談してくれたって良かったじゃないか。 文句を言いたくても既に後の祭りだ。 とりあえず、まずは目の前の仕事をこなすしかない。 透は重い足取りで職員室に向かった。 *** **** 放課後、憂鬱な気分で席を立ち指定された場所へと向かう途中、背後から呼び止められた。 「よぉ、今から行くのか?」 「あぁ。誰かさんが断ってくれたお陰でね」 「え? 何言ってんだ、お前。実習生の名前みてないのか?」 キョトンとした声で尋ねられ透は首を傾げる。名前? そう言えば校長から何も 聞かされていない。 「ま、会えばわかるか。もう来てるみたいだし」 ニヤリと意味深な笑みを浮かべながら、頑張れよと背中を押され、たたらを踏んで堪える。 「頑張るって、何をだよ……」 「まぁ、いいから。ほら、行ってこいって」 「ちょっ、おい!」 戸惑いを隠しきれずに扉の前で振り返ると、楽しそうにヒラヒラと手を振られた。 一体何なんだと眉を寄せつつも、いつまでもここに突っ立っているわけには行かず、深呼吸を一つしてドアを開ける。すると―――。 「あ! マッスー!」 ガタンと椅子が鳴る音と共に視界に飛び込んできたのは、真新しいリクルートスーツに袖を通した和樹の姿だった。

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