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春 5

「……自分で言うな。ばか」 「ふはっ、ひっで。久々に言われたなぁ、マッスーに馬鹿って」 本当にコイツは馬鹿だと思う。何処までも真っすぐで、自分の想いに素直で。全然ブレないし、めげるという事を知らない。 「馬鹿だよ、本当に……。そして、すげーよお前……」 「マッスー、それ褒めてんのか貶してんのかどっちだよ」 「両方だよ、ばーか!」 「馬鹿、馬鹿って子供かよ」 そう言いながらも和樹はどこか嬉しそうに笑っている。そんな彼につられて、透も思わず表情を崩す。 「……俺さ、マッスーって実は俺の事好きだろ? ってずっと思ってたんだ。でも、とうとう最後まで本当の気持ち聞けなかった。フラれた時はショックですっげー落ち込んで、自暴自棄にもなったけどさ、大学行って教育理論とか、先生としての心得だとか色んな事学んでいくうちに、わかった。勿論、全部が全部理解出来たわけじゃないけど……」 そっと手を握られて、目が合い、ドキリとする。 「ね、俺はもうマッスーの生徒じゃないよ? 今なら、教えてくれる? あの時本当はどう思ってたのか……」 「……む、昔の事だろ」 「またそうやって誤魔化す。そう言うのいいから。逃げないでちゃんと答えて」 腕を引かれ距離を一気に詰められる。鼻先が付きそうなほど間近で見つめ合う形になり、透は視線を逸らす事も出来ず固まってしまう。 和樹の真剣な眼差しにドキドキしながら小さく息を吐き出すと、透は意を決して口を開いた。 「……好きじゃなきゃ、あんな事許してない」 「答えになってないよ。マッスー」 咎めるような低い声が耳元に落とされ、ビクリと身体を震わせる。 「俺馬鹿だから、はっきり言ってくれないとわからないよ。また、勘違いしたくないし……」 以前自分が放った言葉がブーメランとして返ってきて、透は眉間にシワを寄せた。

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