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通じ合う思い 9
「マッスーそろそろ起きないと遅刻するよ」
透が目を開けると、和樹が顔を覗き込んでいた。
視線だけで辺りを見渡せば、ぼんやりとしていた頭が覚醒していく。
ここは和樹の部屋で、昨日は遅くまで睦み合っていたことを思い出し、じわじわと恥ずかしさが込み上げてくる。
「シャワー浴びる? 動きづらいなら俺が連れて行ってやるけど」
「っ、いい! 自分で出来るから!」
慌てて飛び起きるが、下腹部の鈍い痛みに小さく呻くと透は再びベッドに身体を倒した。
「ほら無理しないの。立てる?」
「……多分」
よろめきつつも何とか立ち上がると浴室へ向かう。
「服脱がせるの手伝ってやろうか?」
「いい! 子供扱いすんな!」
揶揄うように言われてムキになって答える。そんなことまでされるのは恥ずかしくて仕方がない。
「今日休んじゃえばいいのに」
「馬鹿言うなよ、担任がそう簡単に休むわけにはいかないだろうが」
軽口を叩く和樹を一蹴してバスルームへ入ると頭から熱い湯を浴びる。
「あー……腰痛ぇ……」
鏡に映った自分の身体を見て思わず呟いた。あちこちに残された赤い鬱血痕はしばらく消えないだろう。こんなものを付けて学校へ行けば何を言われるかわかったものではない。
「……まぁでも、仕方ないか……」
透は気怠さを振り払うように軽く頭を振った。
和樹と想いを通じ合わせて、ようやく恋人同士になれたのだ。嬉しくないわけがない。
「アイツ……こんなとこにまで」
太腿の内側にまで付けられた所有印に苦笑いが零れる。普段見えない場所にわざわざ痕を付けているあたり、和樹の性格が出ている気がした。
「……これ、消えて欲しくないな……」
ぼそりと呟いた言葉にハッとして、じわじわと顔が熱くなっていくるのを感じて思わずきょろきょろと辺りを見渡した。
良かった、和樹に聞かれてなかったみたいだ。
こんな恥ずかしいセリフアイツには絶対に聞かせられない。
そう言えば行為の最中も色々と恥ずかしくなるような事を口走ってしまったような気がする。最中のことを思い出すとまた頬が熱くなってきて、誤魔化すように勢いよく蛇口を捻った。
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