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新しい生活

それから数週間が経ち、いよいよ教育実習生としての初出勤の朝。 「忘れ物はないか?」 「だ、大丈夫……多分」 「多分ってなんだよ。俺まで不安になるだろうが」 苦笑しながら、透は和樹の背中をバシッと叩いた。 「お前ならきっとやれるって。自信持てよ」. 和樹が本番に強いのは嫌と言うほど見てきた。 だから、そこまで心配はしていないが、当の本人は未だに緊張が解れないらしい。 そんな初々しい姿も可愛いと思う自分は多分きっと末期かもしれない。 和樹のネクタイを直してやりながら、仕方がないなと小さく息を吐く。 「たく……緊張がほぐれるように、おまじないしてやるよ」 そう言って和樹の首に腕を回して顔を引き寄せるとそっと唇を重ねた。 触れるだけの軽いキスはなんだか照れくさくてすぐに離れようとすると、突然腰を強く抱き寄せられて深く貪るようなキスを仕掛けられる。 「んっんんっ」 いきなりの深いキスに驚いている隙に口内に舌が差し込まれ、口腔内を犯していく。 「……っ、はぁ……マッスー」 「ば、バカ! 何考えてんだよっ」 「だってマッスーが煽るから」 「煽ってねぇよ! 俺はお前が落ち着くようにと思って……」 「わかってるって。だから俺の為にもう一回しよ?」 ね?と首を傾げる仕草は可愛らしく見えるのだが言っていることは全然可愛らしくはない。 しかも腰に押し付けられているものはしっかりと反応していて、透はげんなりとした表情を浮かべた。

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