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新しい生活 8

「……まぁ、良かったよお前」 家に辿り着き、事前に準備していたアルコールをグラスに注ぎつつ、透はソファの上で寛いでいる和樹に声をかけた。 「何が?」 「何がってだから……実習。やっぱ、すげぇなって思って……」 冷蔵庫からケーキを取り出し、テーブルの上に置きながら言う。 「フハッ、さっきと言ってる事全然違うじゃん」 「うるさいな! アキラに惚気てんのかとか言われんのが嫌だったんだよ!」 「俺は惚気てくれても良かったんだけどな」 「やだよ。そんなの」 「そう? 俺は別に良いよ」 「……俺が良くない!」 「そっか」 和樹はそう言って笑うと、隣に座る様にポンポンと自分の横を叩いた。 「……でも、恥ずかしかったのは事実だからな!!」 てきぱきとテーブルの上につまみやお酒を並べていた手を休め、和樹の隣にドカッと腰を下ろす。 そして、手に持っていた皿とフォークを置くと、和樹の肩に頭を預けるようにして寄りかかった。 すると、和樹はそんな透の身体を引き寄せ、優しく抱きしめてくれる。 「うん、ごめん。でも、今日言った事全部本当の事だから」 耳元に囁かれる甘い言葉。愛しそうに髪を撫でてくる大きな掌。 背中を摩る優しい指先。全身で感じる彼の体温。 それら全てが心地よくて、幸せで……。 「……知ってる」 透はふっと頬を緩めると、彼の背中に腕を回して首筋に顔を埋めた。

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