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僕たちの答え

「和樹、教員試験合格おめでとう!」 本日貸切と札のついた扉を開けると、いきなりパンッとクラッカーが鳴り響いて色とりどりの花びらが宙を舞った。 店内にはあらかじめ準備していたと思われる垂れ幕まで飾られており、そこには『祝! 和樹先生! おめでとさん』と書かれている。 辺りを見渡せば、オーナーのナオミは勿論のこと、拓海や雪哉の姿があり和樹は何処か照れくさそうに頬をかいた。 「なんだか照れるな……。でも、嬉しいよ。みんな、ありがと」 「しっかしまぁ、お前が先生なんて、世も末だなマジで」 雪哉の恋人であり、一つ上の先輩でもある橘が呆れたような、でも何処か嬉しそうな声を漏らす。 「相変わらずキツイな橘先輩。 こういう時位褒めてくれてもいいのに」 「ふふ、安心しなよ。こう見えてめちゃくちゃ喜んでるんだから。和樹の合格知った時、まるで自分の事みたいに色んな人に電話掛けまくってたんだよ?」 「あっ! 雪哉! てめっ余計な事言うんじゃねえ!!」 橘が慌てて雪哉を制止するがもう遅い。 「あー、どうりで先輩たちからやたら連絡来るなぁとは思ってたけどそう言う事だったんすか……」 「フン! 別にお前の為じゃねぇ。かける用事があったからついでだ! ついで!」 バツが悪そうに口を尖らせる橘を見て、和樹は思わず吹き出した。 確かにこの人は素直じゃない。 いつも不機嫌そうにしているし、ぶっきらぼうな口調で話すし、直ぐに手や足が出てくる。 だけど本当は誰よりも情に厚く、優しい人。

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